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危機感を共有するために必要なのは、新しい伝え方の発明『ワンダーウォール 劇場版』脚本:渡辺あや【Director’s Interview Vol.60】

危機感を共有するために必要なのは、新しい伝え方の発明『ワンダーウォール 劇場版』脚本:渡辺あや【Director’s Interview Vol.60】

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多くの熱い支持を集めたドラマ『ワンダーウォール』が、ついに劇場公開される。


軽やかでポップな筆致の青春ドラマに内包された、鋭い社会的テーマ。エンターテインメントと社会問題をここまで鮮やかに両立させた作品は、最近の日本ではそう多くはないだろう。紛れもなく大傑作である。NHKの地域発ドラマが劇場公開にまで至るのも、極めて異例だ。


脚本は、『ジョゼと虎と魚たち』(03)『メゾン・ド・ヒミコ』(05)、連続テレビ小説『カーネーション』(11-12)などを手がけた、渡辺あやによるオリジナル。渡辺作品の特徴とも言える、温かく優しい眼差しは本作でも健在だ。


多くの人を惹きつける『ワンダーウォール』が持つ魅力とは?渡辺氏に話を伺った。


Index


当初の企画に無かった、大学寮の存廃問題



Q:本作『ワンダウォール』に関連して、イベントや取材などで渡辺さんの姿をメディアでよく目にしました。あまり表に登場されないイメージがあったので意外でした。


渡辺:京都には、この作品の近衛寮のような学生寮が実際にあるのですが、そうした場所では今でも寮の存廃問題が継続中です。ドラマ自体はフィクションなのですが、今回脚本を書いたこと、それを映画化しようとみんなで頑張ってきたこと、そしてメディアに出ることも、全てはこうした問題を、多くの方に知ってもらいたいからなんです。


このままいくと、多分そうした寮は潰されてしまうのですが、はたして本当に潰していいものなのか? 一人でも多くの方に、この問題について考えていただきたいなと思っています。


Q:当初はNHK地方ドラマの一企画だったかと思いますが、なぜこの大学寮を取り上げたのでしょうか。


渡辺:学生の町としての京都に、焦点を当てたドラマを作りたい。それが、私のところに来た最初の企画です。就職活動に悩む京都の女子大生が、寮の不思議な面々と出会って自分を見出していく…。といったあらすじで、学生寮の存廃問題とは全然関係のない内容でした。




実はこうした学生寮は、個人的に昔から気になっていて、面白そうな場所だなって思ってたんです。それで、最初の打合せでその寮のことを話していたときに、寮が存廃問題を抱えている事を初めて知りました。


その話を聞くと、自分が普段から抱いている問題意識みたいなものと、その存廃問題がすごく重なる気がしたんです。だったら、どうせやるのであれば、その問題を主軸に据えて描きたいという気持ちが強くなっていきました。



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