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【CINEMORE ACADEMY Vol.4】撮影編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

【CINEMORE ACADEMY Vol.4】撮影編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

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制約がある中で、クオリティを上げていくコツとは



Q:先ほどの香盤表のお話でも出ましたが、時間的な制約もある中で、藤井監督はどんな工夫をされて、クオリティを保ち続けているのでしょう?


藤井:準備が全てですね。演技に対しては決めきらないけど、ビジョンだったり世界観は決めておく。ちゃんと準備を行ったうえで、予想「以上」のものを作っていくのが現場だと思います。


映画の香盤表って、時間が書いてないものがすごく多いんです。でも僕は、絶対に10分単位で時間を書いてほしいっていうオーダーをしています。なぜかというと時間を押したくないから。現場が押したら、様々なスタッフがやりたかったことを叶えられず、全員不幸になる。だから僕にとって香盤表は、絶対に時間を守るための誓約書だと思っています。


今回はチームがすごく優秀で、みんなが香盤表に合わせてくれた。清原さんの上がる時間を22時で完遂できたのは、その象徴です。


上野:撮影時期が夏だったので、夜暗くなるのが19時半くらい。そこからライティングを組むとなると、CMの人間のペースだったら「暗くなってから30分~1時間はちょうだいね」というところなんです。でも、22時までにこれだけ撮らなきゃいけないから、そんな悠長なことを言ってたら間に合わない。なので、暗くなりかけたところで調節して、速攻撮影するぞ!って状態でした。


藤井:いまの千蔵さんの話もそうですが、駆け出し時代と今で圧倒的に違うのが、自分の信頼できるスタッフたちが「自分たちの映画だ」と思ってやってくれているところ。みんなが良いものにしたくてやってくれているから、ストレスがなくて。自分はそれに恥じない監督になろうと思って、一個一個を突き詰めていくことができました。




Q:例えばデヴィッド・フィンチャー監督だと、なかなかOKを出さないことで有名じゃないですか。千蔵さんや(前田)浩子さんからみて、藤井さんは撮影現場でどういったタイプの監督なのでしょう?


前田:以前も少し話しましたが、藤井監督はびっくりするぐらい時間に遅れないですね。同時に、時間のズレが起きることについて、すごく厳しい。1回エキストラを連れて行ったとき、道を間違って到着予定時間をオーバーしちゃったら、かなり怒られたんです。


「ちょっといいですか」って公園の隅に連れて行かれて、「日の強さとか、陰り、雲の動きを細かく計算してるから、少しでも予定がズレるとそれが変わってきてしまうんですよ!」と言われました。そのときは私も小僧のようになって「すみません」って謝ってましたけど、おっしゃる通りだなと思いました。気の引き締まる思いになりましたね。


上野:藤井監督は、頭の回転がものすごく早いんですよ。口喧嘩だったら勝てねえなって(笑)。


前田:すごく細かいところまで見てますよね、スタッフの動きを含めて。機材のこともよく分かっているので、監督に聞いたら「若造だからってナメられないようにすごい勉強した」って言ってて、なるほどなと。


上野:監督によっては、ビジュアル重視でお芝居は役者にお任せっていう人や、逆に芝居のことしかみていない人もいるわけです。でも藤井さんは、全体を俯瞰して、いい配分でみてくれている。


藤井:本当に、準備が大事なんですよ。準備って、崩すため、壊すために行うものだと僕は思っています。知っているものは壊せるけど、知らないものは壊せない。だからとにかく準備をします。今回は千蔵さんがどんどんイメージを作ってくれましたし、百戦錬磨の俳優さんばかりだったので、本当にこのチームでやれて良かった。


ただ、周りから言われるのは、クリント・イーストウッド監督(早撮りで有名)よりはフィンチャー寄りというか。粘りすぎて、たまに怒られたりもします(苦笑)。



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