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【CINEMORE ACADEMY Vol.4】撮影編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

【CINEMORE ACADEMY Vol.4】撮影編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

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藤井監督が驚いた、iPadを使った調光システム



Q:今回、千蔵さんをはじめ撮影チームは、クランクインをどのように迎えましたか?


上野:クランクイン前日に入って、ライティングの細かい調整を行いました。実は僕、劇映画の撮影が今回初めてだったんです。しかも最初の数日は照明の西田と撮影チーフが来れなくて、いわば右腕と左腕がいない状態で臨まなきゃいけなかった。


つばめの家は夜のシーンも多く、ライティングにかける分量がとても多いシーンだったので、そこは事前に照明の西田と細かく打ち合わせをして撮影に臨みました。


Q:それは大変でしたね……。ライティングというのは、照明を置いたり、吊ったりみたいなイメージで大丈夫でしょうか。


上野:色々ですね。もちろん役者の立ち位置ごとに映画用の照明で照らすライティングもあります。今回はなるべくプラクティカルライティングと言って、間接照明だったり、家のインテリアとして実際に吊るすペンダントライト等、画に映る見せライトでなるべく構築しました。ロケハンの時から、「ここのライトはこのくらいの色温度で、こっちからグリーンの光が来るように」とか、イメージを絵に描いてプランを立てました。

 

照明のことを考えるときには、「お芝居的に絶対ここら辺の角度が美味しくなるだろうから、そこにどんな光質の間接照明を置くか……」とか美術チームにも相談しながら、配置を決めていきます。そういった空間づくりが、一番大事ですね。

 

まずは空間を作って、それだけじゃ足りない場合に、強調させるライトを焚きましょうとか、細かい調整に移ります。空間づくりだけで完結したら最高だなとは思ってやっていますね。




藤井:千蔵さんはちょっと特殊で、照明のディレクションも基本自分でやるんですよ。日本は照明技師さんと撮影監督が分かれている場合も多いんです。その中で今回一番驚いたのは、千蔵さんのチームは全員iPadで照明の光量調整を行うんです。映画の現場でそんなの見たことなくて……。調光を全部iPadでやってて、先進的なチームだなって感動しました。


上野:あれはね、僕らが先進的というより、機材が先進的だった(笑)。蛍光灯なんかでも、最近は充電で稼働できるものがあって、しかもiPadでいかようにも色が調整できる。あいつがいなかったら、今回やばかったかもなぁ。


僕が特殊というか、世界的に見たらむしろスタンダードなんです。照明技師さんと撮影監督が分かれてる日本のシステムのほうが、世界的に見たら特殊なんだと思います。


ただ、もちろん照明部は僕からすると最も大切で必要不可欠なパートナーです。西やんとは長い間一緒にタッグを組んでやっていて、僕の好みもやり方も一言で分かってくれますし、僕よりもいいアイデアを考えてくれることも良くあります。


Q:ちょうど『パラサイト 半地下の家族』(19)がブームになって、それこそiPadなどで自由に調整できる照明が注目されたんですよね。だから、こういったお話を伺えるのがすごく面白いです。今はそんなに機材が進化しているんですね。


上野:そうなんです。コードレスの照明は非常にありがたいですね。撮影現場で、電源コードを隠すって大変なんですよ。コードを見せないようにするには、役者やカメラの動きにも影響が出てしまうので。


あとは、ちょっと前までは、照明にフィルターを貼って手作業で調光をしていたわけです。それがiPadで簡単に調整できるようになったので、使わない手はないですね。プロデューサーサイドからみても、お金と時間をセーブできるものだなと思います。




Q:機材の進化でいうと、ドローンの投入もあるかと思います。ドローンを使えるようになって撮影がどう変わったのか、メリットやデメリットなどを含めて教えてください。


藤井:まずは演出側から言うと、デメリットは個人的には一切ないですね。どんな町で、どんなシチュエーションで、どんなヒューマンドラマが始まるのか、というのを一発で見せられる。


例えば『アメリカン・ビューティー』(99)とか、冒頭に「こういう町の話なんだ」って俯瞰があってすごく良いんですが、空撮ってお金がかかるので、今までの日本ではなかなかできなかった。それが、ドローンによってこんなに簡単に“世界”を表現できるようになって、僕にとってはもう「やった!」みたいなレベルです。これからもずっと使っていきたいなと思ってます。


上野:もう本当にデメリットなんかなくて、ただただ良くなったっていう印象ですね。クレーンの代わりにもなりますし。もちろんドローンよりクレーンでまかなえる範囲は、クレーンでやるほうが、クオリティは高くはなるとは思いますが。ドローンでできないところでいえば、やっぱり夜の撮影とか、まだまだ難しいところはあります。


機材の話をすると、カメラ自体もどんどん進化していて、今やフィルムじゃ考えられないぐらい感度が高いんですよ。人間が普通に生活してる範囲の光であれば余裕すぎるぐらいのところまで来ていますね。すごくエコになったし、お金の面だけじゃなく、作業量やスピードもスマートになってきました。


僕はフィルムで育った世代でフィルムも大好きですが、それだけには固執はしてません。デジタルのメリットも沢山あるので、その時に最適な物をチョイスしていきたい。



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