3．『カツベン！』（19） 監督：周防正行 126分
前年の映画『スマホを落としただけなのに』（18）で見せた狂気の演技も話題を集め、2019年にはなんと6本もの出演映画が公開された成田。その締めくくりとなるのが、念願の初主演映画『カツベン！』だ。
サイレント映画の時代、語りで映画に彩りをもたらした「活動弁士」を題材にした本作。ナレーションに加え、全登場人物を声色を替えて演じ分ける“語りのプロ”である活動弁士に憧れる青年が、めきめきと才能を発揮していく姿を、個性的なキャラクターとコミカルなシーン満載で描いていく。
100人を超す候補の中から周防正行監督に見いだされ、主役を勝ち取った成田。劇中では“七色の声色”といっていいほど見事に「男声」「女声」「ナレーション」を使い分け、さらに役どころによってアレンジを利かせ、或いは同じ作品であっても観客に合わせて演じ方を変幻自在にギアチェンジしていく。『君の名は。』でも見せつけた“声の演技”、その一層進化した職人芸は、何度見ても聞きほれてしまうことだろう。
メイキング映像やインタビュー等によると、半年間の猛特訓に励んだそう。活動弁士の研究だけでなく、講談や落語にも常に触れ、現場では周防監督の高い要求にも食らいついた。成田が初主演映画で成し遂げた偉業は、この先も永く語り継がれていくことだろう。
『カツベン！』では、喜劇役者としての才能も発揮し、“活弁愛”は誰にも負けないが、とにかく腰が低く、ちょっと頼りない主人公を生き生きと好演。口をあんぐりと開ける驚きの表情や、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、竹野内豊といった濃いメンバーに怒鳴られて恐縮しきりになる姿など、観る側が思わず応援したくなるような小心者の青年を、絶妙な塩梅で提示している。
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