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『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』山崎エマ監督 NYから帰国後、高校野球が日本社会の縮図に見えたんです。【Director’s Interview Vol.73】

『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』山崎エマ監督 NYから帰国後、高校野球が日本社会の縮図に見えたんです。【Director’s Interview Vol.73】

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人間形成のための部活



Q:花巻東の佐々木監督が坊主の廃止を告げるシーンは本当に象徴的でしたね。他にも映画の中では、日本独特の考え方もたくさん捉えられていました。


印象的だったのは、横浜隼人のレギュラーメンバー発表のシーン。野球部に入って努力は続けてきたものの、球拾いばかりでろくに野球ができない選手たち。監督は「野球をしに野球部に入ったのではなく、人間形成をするために野球部に入ったのだからそれでいいんだ。」と、レギュラーになれなかった選手たちをフォローします。


この辺はまさに日本独特の考えですよね。選手たちもその考えに同意しているように見えましたが、「野球がしたいから野球部に入った」というのが本音なのではと、つい思ってしまいました。


山崎:確かに「人間形成のために部活をやる」というのはアメリカにはない発想で、例えばチームに18人しか入れないとわかった時点で、違うスポーツをやったり、違うことをするのが当たり前なんです。部員が130人もいて大半は玉拾いで終わるようなシステムは、日本だけかもしれませんね。


今回の映画では、新入部員の指導係になった3年生も撮影したのですが、彼は公式戦に一度も出ることなく卒業していくわけです。でも新入部員の指導を本当に立派に勤め上げている。将来、彼みたいな人が、日本の社会に出ていくことを想像すると、日本の希望を感じましたね。


部活を通して絶対的に大事なことを学んでいるなって思いましたし、もし将来自分に子供ができたら、スポーツの技術を高めるだけではなく、この野球部のように、人間的な部分が鍛えられる環境にいてほしいなとまで、思ったりしました。


「人間形成のために部活をやる」という考えは、個人的にはすごく好きなのですが、それに対して違和感が出る人がいて当然だと思いますし、そういった議論が出ることも含めて、今回は狙って作っています。




そういう意味でも、いろんな視点を持って映画を作ることができたかなと思います。今回の撮影は、ほとんどのスタッフがアメリカ人で、カメラマンなんて日本語が全くできないまま日本にきて、来た次の日から半年間ずっと高校野球を撮っているんです。


彼らは、日本人だと気がつかない色んなところに目がいくし、ヘルメットや靴がビシッと並んでいることに驚いたりして、まるで写真を撮るかのように色々撮影していましたね。日本人だと当たり前のことが、彼らにとってはそうではないので、面白い視点の画が撮れたと思います。


また、アメリカ人の彼らは疑問に思うことも多く、例えば「なぜ野球部員は坊主頭なんですか?」なんて、日本人同士だと当たり前すぎて、なかなか聞けないのですが、「監督、カメラマンのマイケル君がこんなことが知りたいそうなんです!」って言って、彼らをダシにして色々質問することもできましたね(笑)。


そんな質問に対しても、監督も選手達もしっかり話してくれて、ちゃんと伝えようとしてくれたのは本当にありがたかったです。何より、今まで当たり前だと思って聞けなかったことに踏み込めたのも、とても良かったと思いますね。



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