『ナチュラル』あらすじ
ネブラスカ州の天才野球児ロイは大リーグ並みのプレーをして周囲を驚かせていた。20歳になった彼は幼い頃からの夢を実現する為に、将来を誓いあった恋人アイリスにしばしの別れを告げ、希望に胸を膨らませながらシカゴへと旅立つ。しかし、彼には予想もつかぬ運命が待ち受けていた…。
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ロバート・レッドフォードが辿ってきた苦難の人生
ロバート・レッドフォードは、間違いなく映画史にその名を刻むスター俳優だ。しかし、彼の人生は順風満帆だった訳ではない。むしろ苦難の連続だった。
小さい頃からスポーツ万能だったレッドフォードは、野球の特待生としてコロラド大学に進学するも、未成年での飲酒が発覚してわずか1年で中退。野球の夢を絶たれたレッドフォードは、今度は画家を目指してヨーロッパに渡航するが、己の才能の限界を感じて早々に帰国。
演劇学校で舞台美術を学ぶもそれもうまくいかず、恵まれた容姿を活かして俳優に転身。1959年にブロードウェイでデビュー、映画やテレビにも出演するようになるが、なかなか大きな役をゲットするには至らず、30歳を過ぎてしまう。
転機となったのは、アメリカンニューシネマの記念碑的作品『明日に向って撃て!』(69)。元々はポール・ニューマン&スティーブ・マックイーン主演で撮影される予定だったが、都合によりマックイーンが降板。代わってサンダンス・キッド役に抜擢されたのが、無名のロバート・レッドフォードだったのだ。
『明日に向って撃て!』予告
この作品を契機として、『スティング』(73)、『華麗なるギャツビー』(74)、『大統領の陰謀』(76)と、アメリカ映画を代表する名作に次々と出演。初めて監督を手がけた『普通の人々』(80)は批評家から絶賛され、いきなりアカデミー監督賞を受賞。
1978年からは若手映画製作者の育成を目的として、サンダンス映画祭を開催。かつて自分の進むべき道を見出せず、30歳まで日陰街道を歩んでいた男は、アクターとして、フィルムメーカーとして、そして若き映画クリエイターを支援するインキュベーターとして、ハリウッドの頂点に上り詰めたのである。
そんなレッドフォードが、『ナチュラル』の主演を務めることになったのは、至極当然の流れだった。この映画は、35歳で大リーグデビューを果たしたオールド・ルーキーのロイ・ハブスが、超人的な打撃を発揮してチームを勝利へと導く物語。自分自身と主人公ロイを重ね合わせたことは、想像に難くない。当時のレッドフォードは、30代どころか五十路近い48歳だったのだが。