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硬派で、熱く、魂のこもったトニー・スコット映画の魅力
8月になると、この暑い季節に亡くなった映画監督トニー・スコットのことを思い出す。
彼は、兄リドリー・スコットみたいな格調高さを追究するわけでもなく、かといって商業主義に迎合するような生ぬるい姿勢を見せることもなかった。チャカチャカと早回しで動く映像がトレードマークのため、どこか軽く見られることもあるが、その実、遺した作品はどれも硬派で、熱く、魂のこもったものばかりだ。
スコット作品ではとにかく様々な要素が複雑に絡まりあう。だが決してそれが混沌に陥ることはない。演出の采配が極めてクレバーゆえ、不思議とその状況は観客の頭の中でわかりやすい一本の筋となってスムーズに理解、吸収されていく。また、ムダな説明シーンをできるだけ削ぎ落とし、作品の核をできるだけスピーディーかつダイレクトに観客へ届けようとするのも、トニー作品の特徴だった。
これらの全てが懐かしい。あのチャカチャカした映像にもう一度会いたい。彼の新作が劇場にかかることは二度とないのかと思うと、寂しさがこみ上げてくる。