10月31日より第33回東京国際映画祭が開催される。今回、現役で活躍する日本の映画人を海外に紹介する「Japan Now」部門監督特集に選ばれたのが深田晃司監督。国内外の数々の映画賞に輝く俊英であり、今年はコロナ禍に苦しむ日本のミニシアターをサポートする「ミニシアター・エイド基金」の発起人のひとりとなり、同プロジェクトはクラウドファンディングで3億円以上を集めるなど映画界隈で大きな話題を呼んだ。
今回のJapan Nowでは、第69回カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門審査員賞に輝いた『淵に立つ』(16)をはじめとする長編4本と、コロナ自粛と言われた期間に制作された作品を含む5本の短編作品をセレクト。同部門では、原田眞人、岩井俊二、大林宣彦らに続く映画監督の特集上映となる。
2010年に『歓待』(10)が出品されて以来、東京国際映画祭とは縁が深く、また海外の国際映画祭や映画人との繋がりを持つ深田監督に、映画作家と映画祭の関係について話を伺った。
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この10年間の決算となる特集上映
Q:今回は、どんな経緯で深田晃司監督特集が決まったんでしょうか?
深田:経緯に関しては私よりも、東京国際のセレクションの方々に聞いていただいて、自分に教えて欲しいです(笑)。
Q:どういう風に伝えられたんですか? 「今年は深田監督特集やります」という連絡が映画祭から急に来るんですか?
深田:ああ、急に来ました。お電話で。その時は「自分でいいんですか?」って感じでした。これまでに特集されていた監督さんは、ある程度長いキャリアを積まれていて、評価も確立している方が多かったのと、年齢も上の方が多かったので、心の中では今回は珍事だなって思いました。
Q:でも、東京国際映画祭ではこれまでも長いお付き合いがありますよね。
深田:そうですね。最初は2010年に『歓待』という作品を出品させてもらって、賞ももらったりしたんです(注:「日本映画・ある視点」部門作品賞を受賞)。東京国際映画祭がなぜ自分をセレクションしたのかは自分にはわからないことですけど、個人的なことでいうと2010年に『歓待』で賞をいただいたことが、その後に海外の映画祭に出ていく後押しになりました。それからちょうど10年の節目の2020年に特集を組んでもらえたことは、すごくよかったかなと思ってます。
Q:上映作品のセレクションはどう決まったんでしょうか?
深田:それも基本自分はノータッチです(笑)。ただ、映画祭の方から「このラインナップで考えている」ということは伝えてもらっており、その時に『東京人間喜劇』(08)は自分としても特集ならすごくやってほしい作品だったので、ちょっと強めに推させてもらったりはしました。
Q:映画祭で、監督個人の特集が組まれるのは今回が初ということでいいでしょうか?
深田:実は、かなり早い時期に大阪アジアン映画祭で特集を組んでもらったんです。『ほとりの朔子』(13)を作る前の2011年だったんですけど、『歓待』と『ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より』(06)と『東京人間喜劇』、あと短編いくつかを上映してくれてましたね(注:大阪アジアン映画祭2011特集企画、「Directors in Focus:深田晃司という才能」)。
でも映画祭でこうして自分の特集を組んでもらえるのはそれ以来なので、この10年間の決算的なことができるのは本当にありがたいですね。