1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『スーパーノヴァ』ハリー・マックイーン監督 コリン・ファース、スタンリー・トゥッチで表現した究極の愛のかたち【Director’s Interview Vol.123】
『スーパーノヴァ』ハリー・マックイーン監督 コリン・ファース、スタンリー・トゥッチで表現した究極の愛のかたち【Director’s Interview Vol.123】

© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film

『スーパーノヴァ』ハリー・マックイーン監督 コリン・ファース、スタンリー・トゥッチで表現した究極の愛のかたち【Director’s Interview Vol.123】

PAGES


コリン・ファースに絶対ピアノを弾いてほしかった



Q:なるほど。コリン・ファースがベッドから落っこちたりするのがあまりに自然だったりして、もしかして脚本には書かれていなくて、本番で偶然に起こったことも映像になっていると感じたのですが……。


マックイーン:いや、あそこは脚本どおり(笑)。つまりコリンとスタンリー(・トゥッチ)の演技が、それだけナチュラルで、即興で演じたように見えるということです。彼らほどの俳優になると、2人に間に漂うエネルギーが自然なものになります。だからそのエネルギーをカメラでとらえられるかどうかが、映画の成功のカギでしょう。そこを逃すと、失敗作になってしまう。コリンとスタンリーを迎えられ、まさに監督冥利でした。


Q:彼らは私生活でも友人で、最初に出演が決まったスタンリーが、やりやすい相手ということでコリンを提案したそうですね。息の合った2人なので、リハーサルも少なかったのでは?


マックイーン:そうとも言えますが、現実的にリハーサルをやっている時間がなかった、というのが正直な答えです(笑)。撮影が始まる数日前にセリフの読み合わせをやっただけですね。しかし脚本どおりの順番で撮っていくことで、素直な感情の流れを引き出すことができました。そしてコリンやスタンリーのような俳優は、本番で何度もテイクを繰り返す必要はありません。撮影日数も予算も限られた作品ほど、熟練の俳優が必要だと再認識します。さらに僕自身も俳優をやっているからわかるのですが、重要なシーンやエモーショナルな瞬間ほど、何度もテイクを重ねない方がいいのです。瞬間的に表れた感情こそ最高なケースが多いですから。



『スーパーノヴァ』© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film


Q:ピアノの演奏がコリン・ファースとクレジットされていますが、実際に彼が弾いた音が使われているのですね。


マックイーン:ピアノのシーンで、いわゆる“吹き替え”は避けたかったのです。よく俳優がピアノの鍵盤に手をかけ、演奏が始まるとその手がプロのピアニストに変わったりします。そういったごまかしはやりたくないと、コリンと最初に話したときに伝えました。そうしたらコリンは、自宅にピアノがあり、子供時代によくピアノを弾いていたと答えたので、彼に任せることにしました。


Q:演奏する曲も、あなたが決めたのですか?


マックイーン:コリンと相談して、映画に適した曲で、彼が演奏できそうなものを選びました。その結果、エルガーの「愛の挨拶」になったのです。僕が頼んだピアノ教師の下で、コリンは毎日、必死に練習してくれました。この演奏シーンの本番は、撮影の最終日で、コリンは100人以上の観客の前で弾いたのです。サム役の心情を演じながら、ピアノも完璧に弾いてくれて、彼の信じがたい才能を目の当たりにしました。本当に驚くばかりです。映画に流れる音に関しては、80%はコリンが弾いたもので、難しいパートだけプロの音をかぶせています。


Q:その他にも『スーパーノヴァ』は、ドノヴァンの「キャッチ・ザ・ウィンド」など音楽が印象的に使われます。


マックイーン:この作品はロードムービーの側面もあるので、主人公たちの旅に時間が割かれます。その意味で、ラジオが流れたり、音楽を聴いたりするシーンが必然的に多くなる。そこで彼らの年代に思い入れの深い曲をセレクトしていきました。


Q:タイトルの『スーパーノヴァ』とは、星が最後を迎えるときの大爆発を意味します。劇中でもその意味が語られますね。


マックイーン:スーパーノヴァは死にゆく星のことですが、消えることで、銀河系で最も美しい輝きを放ちます。これはタスカーを表現していると感じ、暗喩として使いました。タスカー自身が、自分の運命をスーパーノヴァと重ねることも、自然な流れになりましたね。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『スーパーノヴァ』ハリー・マックイーン監督 コリン・ファース、スタンリー・トゥッチで表現した究極の愛のかたち【Director’s Interview Vol.123】