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家に帰ること『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ  ※ネタバレ注意

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家に帰ること『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ ※ネタバレ注意

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『マイ・プライベート・アイダホ』あらすじ

フェニックス扮するのは、ナルコレプシー(発作性睡眠)という奇病を抱えたマイク。彼は街角で客を待ちながら、幼少時の甘美な記憶を引きずり、自分を捨てた母親の面影を探し求めていた。リーヴス扮するのは、家出した良家の子息スコット。彼は父親の遺産が転がり込むのを待ちながら、個人的な“聖戦”と称して、人生の意義を探し求めていた。そんな2人が一緒に奇妙な世界に迷い込み、金を持て余した見知らぬ人々と一夜を過ごし、現実離れした冒険を繰り広げる。そうした経験を乗り切り、彼らは互いの悩みやこの世界での自分たちの居場所について少しずつ理解し、路上でしか学べない人生のレッスンを受けることになる。


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多面的な魅力を持つ『マイ・プライベート・アイダホ』



 故リヴァー・フェニックスと若き日のキアヌ・リーヴスを配してストリートの男娼の世界を描き、高い評価を得たガス・ヴァン・サント監督の『マイ・プライベート・アイダホ』。公開年の1991年に本作に触れて以来、その素晴らしさをどう語るべきなのか、筆者は今も考え続けている。なにしろ、『マイ・プライベート・アイダホ』は、さまざまな見方ができる。計算されつくしたロードムービー、心のこもったインディーズ映画、美しすぎる男たちのBL話……いずれも正解だ。しかし、そういう多面性が本作の魅力であるのも事実。本稿では、そんな多角度から、この傑作の魅力を探ってみよう。


 まずはストーリーのおさらい。舞台は米オレゴン州ポートランド。主人公マイク(フェニックス)はストリートで体を売る天涯孤独の男娼だ。つるんでいる男娼仲間のひとりに、市長の息子だが反抗して家を飛び出したスコット(リーヴス)がいる。そして、彼らに父親のように慕われている自由人にして太った中年男ボブがいる。そんな仲間との暮らしも楽しいが、記憶に残る母を見つけたい。かくして、マイクはスコットとともに母を探す旅に出る。アイダホ、さらには異国イタリアへ。しかし、この旅はマイクに厳しい現実を突きつける。


『マイ・プライベート・アイダホ』予告


 原作はシェイクスピアの戯曲「ヘンリー四世 第1部」「ヘンリー四世 第2部」「ヘンリー五世」とされている。さらに言えば、それらを混ぜ合わせた1965年の映画『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』に行き着くが、それについては後述する。同性愛者であることを公言するヴァン・サントは1970年代から、ジョン・レチーの小説「夜の都会」に発想を得た、男娼についての映画の企画を温めていた。これにシェイクスピアのエッセンスを融合させたのが『マイ・プライベート・アイダホ』の原型となった。他にもケルアックの小説「路上」や映画『イージー・ライダー』(69)『パリ、テキサス』(84)の痕跡を見ることもできる。


 1985年に初の長編映画『マラノーチェ』を発表したヴァン・サントは、これを名刺代わりにしてハリウッドに乗り込み『マイ・プライベート・アイダホ』の企画を売り込んだが、ハリウッドのスタジオが興味を示したのはゲイの話ではなく、ヴァン・サントが別に提案したドラッグ中毒者たちの物語だった。結果、ヴァン・サントの監督2作目は『ドラッグストア・カウボーイ』(89)として世界に放たれ、この映画の成功によって3作目『マイ・プライベート・アイダホ』を作ることが可能になる。



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