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家に帰ること。傑作『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ ※注!ネタバレ含みます。

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家に帰ること。傑作『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ ※注!ネタバレ含みます。

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ネタバレ注意、ラストシーンに込められた切なさと温かさ



 本作で描かれる主人公マイクの旅は、とてつもなくエモーショナルだ。親友スコットとともに出向いた”兄“の家で、母は危険な人だったと知らされる。そして彼の実の父が、じつは”兄”と思っていた人であったことも。アイデンティティ崩壊の危機に加えて、最愛の親友スコットも目の前から消える。マイクの状況は、シェイクスピアも真っ青になるほど悲劇的だ。


 ラストでマイクは冒頭の荒野の路上に舞い戻り、そこでナルコレプシー病の発作に襲われ、昏倒する。通りかかった二人組の男は彼からバッグと靴を盗んで去っていく。その次に通りかかった男は、眠っている彼を抱き上げ、車に乗せて去っていく。この後者の男は、車から察するに“兄”だろう。マイクもまた、スコットと同様に家族の元に帰る。そう解釈するのが、本作の自然な流れではないだろうか。



(c)Photofest / Getty Images


 “have a nice day(良い一日を)”というテロップを挟んで、映画はエンドクレジットへ。フィーチャーされる曲は、アイリッシュ・トラッドとパンクロックを融合させ、1980年代の英国で熱烈な支持を受けたバンド、ザ・ポーグスの「オールド・メイン・ドラッグ」。”裏通りで金持ちのジジイから小銭を稼ぐ、この冴えない暮らしから抜け出したい。でも、また戻ってきてしまう”という歌詞が切なく響く。


 人生は良いことと悪いことの繰り返し。マイクのように悲劇の連続することもある。愛する者たちは次々と自分の前から去っていく。周囲は捨てる神だらけ。だが、拾う神もいる。盗人二人組が“捨てる神”ならば、家族は”拾う神”だ。”家に帰る”ということは、本作の大きなテーマとなっているのは間違いない。今見直しても、このテーマは心に染みる。


 無事に家に帰ることーーコロナウイルスの時代にも有効なテーマではないか。そんな普遍性が宿っているからこそ、筆者は『マイ・プライベート・アイダホ』を傑作と断言する。改めてこの映画を見た今、論じるより、ただこう言うべきなのかもしれないーー”良い一日を”。



文: 相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。



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『マイ・プライベート・アイダホ』

ブルーレイ ¥2,990 +税/DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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