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家に帰ること。傑作『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ ※注!ネタバレ含みます。

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家に帰ること。傑作『マイ・プライベート・アイダホ』が示す大切なテーマ ※注!ネタバレ含みます。

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現代のストリートに通じていたシェイクスピアの古典



 スコットというキャラクターを語るうえで忘れてはいけないのが、最初の章に述べた『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』だ。主人公フォルスタッフはそもそも戯曲「ヘンリー4世」などでシェイクスピアが登場させた有名なキャラクター。享楽的で大酒飲み、大ぼら吹きで肥満体の中年男。しかし、強烈なウィットの持ち主でリーターシップもあり、仲間から慕われている。英国王ヘンリー4世の息子で、父に反抗する若き青年ハルも彼を慕うひとりだった。しかし、父の危篤に直面したハルは元いた場所に戻り、ヘンリー5世として即位し、フォルスタッフとの縁をきっぱりと断ち切る。


 監督・主演のオーソン・ウェルズは言うまでもなく、『市民ケーン』(41)などで映画史に大きな足跡を残した巨匠。ヴァン・サントが心酔する監督のひとりであり、『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』からも多大な影響を受けた。ヴァン・サントの視点が非凡であったのは、このフォルスタッフとハルの関係性に、ポートランドの路上との共通点を見出したことだ。そこでは慕われる年長の元締めと、慕う若者たちがいる。



 『マイ・プライベート・アイダホ』のボブとスコットの関係は、まさにそれだ。そして『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』と同様に、一度は慕い、父親のように思っていたボブを、スコットは見捨てることになる。ボブがたどる末路も『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』を忠実になぞっている。そしてスコットは掃きだめを後にして、元居た中流階級の場所に帰るのだ。


 元居た場所に帰るのは、マイクも同様だ。映画は荒野の路上にたたずむマイクの姿に始まり、同じ路上で幕を閉じる。次章では結末に触れつつ、その意味を考察する。



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