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『アジアの天使』石井裕也監督 映画の真実は痛み(pain)にある【Director’s Interview Vol.124】

『アジアの天使』石井裕也監督 映画の真実は痛み(pain)にある【Director’s Interview Vol.124】

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伝えることと言語の壁



Q:その忖度無しのやり取りは、撮影現場ではどうだったのでしょうか。言語の壁もあり、演出指示一つとっても、行間を読んでもらうようなことも難しそうですが。


石井:こういう話をするときに気を付けなくてはいけないのは、日本では、韓国では、みたいに国を一般化して語ってしまうことです。実は全くそんなことはなく、日本人の中で忖度しがちな人もいれば、そうじゃない人もいるし、韓国も然りなんですよね。


国は関係なくて、人それぞれだから、現場で1から10まで全部説明する場合と、分かるよねって言ってそれで伝わる場合と、両方ありました。


ただ、そうは言っても、言語の壁は確かにありましたね。例えば日本では、「そうじゃなくて、こうしてくれ」とストレートに言うと角が立つので、「それはそうじゃないんじゃないかな」みたいに、非常に回りくどい言い方になったりすることがありますが、こういう日本語的表現は通訳できないんです。仮にそのまま訳したとしても、意図は全く伝わらず、「やってほしいの、やらないでほしいの、どっち?」ってなるんです。



『アジアの天使』(c) 2021 The Asian Angel Film Partners


Q:とてもよくわかります。海外の監督にインタビューした際など、変に気を使った言い回しをしてしまうと、結論がぼやけてしまって、通訳の方に申し訳ない気持ちになります。


ちなみに、石井監督の演出や指示の出し方は、日本の現場ではどんな感じなのでしょうか?  


石井:それは作品の規模や性質によって変わりますね。例えばオリジナル作品で、すごく小規模な映画の場合は、スタッフや俳優に対してかなり直接的な言い方をすることが多いです。こういう映画の場合は、自分が持ってる感覚や感性が、より色濃く映画に投影されたほうが、作品の価値につながると思うからです。自分の感覚をより先鋭化させていく感じですね。


一方で、原作モノで大きな規模の映画の場合は、もう少しレンジを広く取って、いろんな風を取り入れるようにしています。自分の感覚だけではなく、もっと多様性を獲得して作品の世界観を広げていきたい。そういう場合は、脚本を書くときも、現場での立ち振る舞いも、なるべく余白を作って、皆さんのアイデアをどんどんすくい上げていくように心がけています。


Q:今回の場合はどちらに近かったのでしょうか。


石井:先ほど話した言語の問題もあるので、前者のやり方を基本にして、自分の意見をストレートに伝えるようにしました。ですが、自分が持っている感覚だけでやってしまうと、韓国で撮る意味がなくなってしまう。なので、ストレートに伝えつつも、僕が今まで知らなかった発想や技術、アイデアを、少しでも引き出せるように工夫しましたね。




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