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『アジアの天使』石井裕也監督 映画の真実は痛み(pain)にある【Director’s Interview Vol.124】

『アジアの天使』石井裕也監督 映画の真実は痛み(pain)にある【Director’s Interview Vol.124】

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意味が分からないもの



Q:映画の内容について聞かせてください。タイトルにもある「天使」ですが、これは企画・脚本のどの段階で入れることが決まったのでしょうか。


石井:一番最初です。


Q:「天使」ありきで企画が進んだわけですね。韓国での撮影も決まった上での企画だったのでしょうか。


石井:はい。天使がどんどん人を噛んで、人間が天使化していく。それがゾンビみたいに増殖していくという、パンデミック映画を当初は考えていました。でも全く意味が分からないと韓国のあるプロデューサーに言われまして。そこから書き直していきました。


でも今考えると、その最初のアイデアも案外悪くなかったなと思っています。例えば今のコロナ禍の状況だって、はっきり言って意味なんてよく分からないですよね。要するに、意味が分からない、起こるはずのないことが起こる時代に我々は生きている。そういうものがやりたかったし、やるべきだと思っていました。最終的にできあがった映画にも、その本質のようなものはちゃんと残されていると思います。


Q:確かに。そもそも映画って、意味が分かるものじゃないだろうっていう。


石井:そういうことなんですよね。従来通りの価値観の中では、もはや生きていくことは困難です。世界中で起こる様々な出来事は、既に自分たちの理解をはるかに超えてしまっている。そういう意味では、天使だって西洋的なかわいい子どもの姿じゃなくても良いはずなんです。信ずるに値するものであれば、何でもいい。それはもう可能性と許容の問題ですよね。そういうことをテーマにして作ったつもりです。



『アジアの天使』(c) 2021 The Asian Angel Film Partners


Q:本作はロードムービーとしても面白かったのですが、このロードムービーの要素と、旅に出る6人の組み合わせは、どのように決まっていったのでしょうか。


石井:ロードムービーに関しては、プロデューサーであり親友のパク・ジョンボムと、いろんな所に旅行したり、キャッチボールしたり、酒を飲んだりという経験がベースになっています。6人のキャラクターに関しては、不完全で欠落した家族同士が融合していくイメージが最初にあって、そこから徐々に決まっていきましたね。


Q:その6人の中でも、息子役の佐藤凌君がすごく印象的でした。あれだけ多彩な役者がいる中でも全然負けてなかったです。


石井:彼には6人の中に溶け込んでほしくなかったんです。大人の都合に振り回される子どもの役ですが、大人は彼のことを分かったつもりになっているけど、子どもは全然違う世界を持っている。それを表現したかったときに、彼の醸し出す独特の存在感は非常に効いていたと思います。




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