『初情事まであと1時間』という、かなり意味深なタイトルのこのドラマは、まさに橋口テイストに溢れた作品に仕上がっていた。1話完結のこのドラマシリーズ、橋口監督をはじめ、三浦大輔監督、大九明子監督、谷口恒平監督がそれぞれ演出を担当、監督たちとドラマタイトルとの相性の良さを感じずにはいられない。
久々にメガホンをとった橋口監督に、今回のドラマの演出からこれまでの映画作品、自身の原点とも言えるデビュー時のお話まで、たっぷりと話を伺った。
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仕事を作り出すのも監督の仕事
Q:橋口作品が観られるのは久しぶりのような気がしますが、撮られたのは『恋人たち』(15)以来でしょうか。また、ドラマというのも意外でした。
橋口:そうですね。撮ったのは『恋人たち』以来ですが、ドラマは過去に何本か手掛けたことがありますね。
Q:今回はどういった経緯でこの作品を撮ることになったのでしょうか。
橋口:去年の1〜2月頃に、製作の松竹ブロードキャスティングのプロデューサーからお話をいただきました。正式に依頼を受けたのは3月でしたが、その後すぐ緊急事態宣言が出て、映画館が閉まったり、舞台や撮影が中止になったりと、みんなの仕事がなくなっている状況でしたね。
当時は周りのスタッフや役者からも、仕事がなくなったという声をたくさん聞いていたので、ここで僕がこの仕事をお受けすると、仕事が色々発生するかなと思ったんです。監督の仕事は、自分の作品を撮ることだけではなく、企画や脚本を成立させて新たな仕事を生みだす。それで役者やスタッフが食えるようにする。そういうことも監督の仕事なんだなと、コロナ禍で改めて痛感したんです。それでお受けすることにしました。