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『DIVOC-12』藤井道人監督を貫く信念。「無茶」こそが、創作の極意【Director’s Interview Vol.146】

『DIVOC-12』藤井道人監督を貫く信念。「無茶」こそが、創作の極意【Director’s Interview Vol.146】

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「これが最後でもいい」と思えない限り撮らない



Q:あとお伺いしたかったのは、脚本で「北海道、沖縄、京都など」を入れた際のお気持ちです。脚本では一言ですが、書いた瞬間に撮影含め、一気に動き出す。ある種の覚悟がいる決断かと感じたのですが、いかがでしょう?


藤井:「プロデューサー(伊藤主税)がキレるな……」です(笑)。実際「これは無理だよ。撮れない」とも言われましたね。でも僕は「その理由がわからない」と粘りました。


今までだってずっと無理をやって撮ってきたし、10分だろうが2時間だろうがそこは変わらない。今回は本当に自由度が高くて、商業映画でありながら初期衝動のままに撮ることができる数少ないチャンスでした。だから「実験映画なんだから、無茶をしたい」と説き伏せましたね。伊藤とは18歳くらいからずっと一緒にやってきていますし、折れてくれました(笑)。


Q:「無茶」は藤井監督にとって、キーワードといえる言葉ですよね。


藤井:そうですね。基本、全作品で無茶をしてきました。こなすという感覚はないですね。


その中で、最近は考え方が少しずつ変わってきて「これが最後になってもいい」と思えない限り撮らない、という風になってきたとは感じます。今回の『名もなき一篇・アンナ』はもちろん大変だったけど「観たことのないものを作りたい」という想いがあるから、自分から飛び込んでいったところはありましたね。



『DIVOC-12』藤井道人監督


Q:そこには、「作品にとって必要だから」という確固たるものを感じます。本作の撮影時にお話を伺った際、3日間で北海道・沖縄・京都・東京(極力少人数のスタッフ体制+キャストで、且つ全員PCR検査をした上)で撮影した理由として「みんなが外に出にくい状況になったけれど、大切な場所はちゃんとあると伝えたかった」と仰っていましたよね。僕はその言葉に感銘を受けました。


藤井:ニュースなどでは「感染者が何人です」という客観的な「数字」を伝えるけれど、実際にはその地に住んで、生活を送っている人がいるんですよね。それが、コロナによって断絶されてしまった。親戚や家族と離ればなれになってしまった人もいるでしょうし、旅行などでその地に行くことを楽しみにしていた人たちや、反対に待ってくれている人たちもいるはず。行かないとわからないことって絶対にあるし、みんな含めて社会だと僕は思うんです。映画制作において、その地に行く必要があると感じていました。


美しい記憶にも、過去にもしない。いまもそこに、人が生きているんだから。それは今回、各地を訪れてより強く感じたことです。


Q:そういった想いは、今回のチームの皆さん(志自岐希生監督、林田浩川監督、廣賢一郎監督)とも共有されたのでしょうか。


藤井:いやいや!(笑) 恥ずかしくってしないです(笑)。仮に僕が言ったとしても、みんな「へー」って冷めた反応しかしないでしょうね(笑)。


僕は自分が藤井チームのリーダーという風には捉えていなくて、『DIVOC-12』に参加した12人の監督の1人という感覚なんです。12人でひとつのチームだし、もっと言うと『DIVOC-12』という1本の作品を作っているつもりといいますか。それもあって、最初はエンドクレジットにも『名もなき一篇・アンナ』というタイトルは入れず、『DIVOC-12』だけにしていました。つけなきゃいけないから入れただけで、自分の中ではそんな気持ちでしたね。




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