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『DIVOC-12』藤井道人監督を貫く信念。「無茶」こそが、創作の極意【Director’s Interview Vol.146】

『DIVOC-12』藤井道人監督を貫く信念。「無茶」こそが、創作の極意【Director’s Interview Vol.146】

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自分にとってのインプットは、日常をしっかり生きること



Q:ノンストップで作品を作り続ける中、インプットはどう行っているのでしょうか。


藤井:どうなんでしょうね……。枯渇して何も出てこなくなったらどうしようという恐怖は常にありますが、「インプットしよう」と思ってそうしたら、ただの情報になってしまう気がするんです。


35年生きてきたらもうそこまで人間って変わらないし、「映画館や美術館に行って、たくさん本を読んで……」と無理矢理動かしても、本質的な部分は身に着かない。東京大学に行って、東京芸術大学大学院に進んでも、僕は濱口竜介さんにはなれませんしね(笑)。自分の原理で嘘偽りなく物語を語ることが僕にできることなので、日常をしっかりと生きることなのだと思います。


自分の目で見て、耳で聞いて、映画を作るときに出てくるものを信じる。出なければ、諦める。そして、〆切を飛ばす……(笑)。


Q:(笑)。


藤井:それこそ本作だってずっと脚本が書けなかったから12人中最後まで引っ張っちゃいましたし、自信を失ってしまうこともあります。コロナ禍に入って、著しくモチベーションが落ちましたしね。僕は「書いてはやり直し、また書いてはやり直し」タイプではなく、「書けるまで寝てる」タイプなので、毎回苦しみます。


でも、焦りと闘っている自分や、常に怯えている自分も好きなんです。ずっと売れていなかったですしね(笑)。きっと自分は、そういう人生を歩んでいくんだと思います。



『DIVOC-12』藤井道人監督


Q:創作意欲に関しては、いかがですか?


藤井:たくさん撮ればいいとは思っていないですし、創作意欲が増しているのかどうかはわからないですね。どちらかといえば、ワガママになってきている気はします。嘘をつきたくないといいますか。


Q:自分が情熱を傾けられるものによりフォーカスを当てるというか……。


藤井:そうですね。今までは70点を100点にする意識があったけど、徐々にやらなくなってきました。いまは100点を出せるかどうか、を考えている気がします。それができないなら、やらなくていいし。これは、撮り続けていくなかで生まれた変化ですね。


仮に来年以降映画が撮れなくなってしまっても、後悔はしないと思うんです。じゃあ何を作ろうかとなるし、監督じゃなくても、他の部署も面白そうだなと興味は広がっています。ただやるからには、ちゃんとしたものを作りたい。それくらいの良い距離感になってきた実感はありますね。「仕事として、映画を作る」という感覚からは、どんどん離れているかもしれません。僕の中で、どこか命と等しいものになっています。



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監督・脚本:藤井道人

1986 年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010 年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(2014年)でデビュー。以降『青の帰り道』(18年)、『デイアンドナイト』(19年)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、など精力的に作品を発表しており、2019年に公開された映画『新聞記者』では、第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞含む6部門受賞、他にも映画賞を多数受賞。今最も注目されている映像作家の1人である。ドラマ「新聞記者」(Netflix)は、'22年に配信予定。



取材・文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema




『DIVOC-12』

2020年10月1日(金)全国ロードショー

製作・配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

© 2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

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