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『そして、バトンは渡された』前田哲監督インタビュー 自分の想像を超えてくるから映画は面白い【Director’s Interview Vol.157】

『そして、バトンは渡された』前田哲監督インタビュー 自分の想像を超えてくるから映画は面白い【Director’s Interview Vol.157】

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原作から映画化への翻案



Q:原作から脚本に落とし込む際、監督から何かリクエストは出されましたか? 


前田:今回は『こんな夜更けにバナナかよ〜』でもタッグを組んだ、橋本裕志さんが脚本を担当してくれました。橋本さんとプロデューサーと僕でシナリオ会議を行ない、色々と議論しましたね。この作品は、ミステリーや謎解きではなく人の感情で物語が動いていくから、感情の流れを大切にしました。


原作では静かに物語が進んでいきます。そこが瀬尾さんの良さなのですが、映画にする場合は、起伏をつけてダイナミックにする必要がある。それで今回は、全体的な構成をかなり調整しました。特に卒業式のあたりは大胆に構成し直しています。ここは脚本家とプロデューサーとかなり議論した結果、斬新なアイデアが生まれました。


Q:映画は全体で137分ありますが、非常に丁寧に物語が進んでいく印象がありました。


前田:僕は120分以内にしたかったが、プロデューサーが切らないほうがいいと。普通は逆ですよね。監督は切りたがらなくて、プロデューサーが切れというのに。でも今回は、短く切っていくと観客が分からなくなる。また、俳優さんたちのお芝居が良かったので、お芝居の途中で切る編集はせずに、なるべく最後まで見せてあげるようにしたんです。その結果長くなりました。


 

『そして、バトンは渡された』©2021映画「そして、バトンは渡された」製作委員会


Q:血の繋がらない二つの家族のお話が同時進行していきますが、脚本・編集とそのバランスはどのように取られたのでしょうか?


前田:二つの話のバランスは編集で調整しました。カットしたシーンもあります。石原さんとみぃたん(演:稲垣来泉)の母と娘パートの印象が強くなりがちだったので、シーンの順番を変えたりもしました。


脚本の段階では、編集で調整できるようにシーンは余裕を持たせて設定しています。しっかりした脚本があるからこそ、撮影現場は自由に生き物のように変化していくことができる。撮影していないと、編集で料理できないですから。素晴らしい脚本は、精密な地図と同じで、行き先に迷うことがない指針となります。




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