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『そして、バトンは渡された』前田哲監督インタビュー 自分の想像を超えてくるから映画は面白い【Director’s Interview Vol.157】

『そして、バトンは渡された』前田哲監督インタビュー 自分の想像を超えてくるから映画は面白い【Director’s Interview Vol.157】

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俳優を信頼して良かった



Q:本作は物語が進むにつれて登場人物の印象が変わるつくりになっています。特に石原さとみさん演じる梨花は、一見大胆なキャラクターに見えつつも、<命がけの嘘と秘密>を抱えている。そのニュアンスが難しかったのではないかと思いますが、石原さんとはどのようなお話をされたのでしょうか。


前田:俳優には自由にやってもらうことが多いのですが、今回は物語の構成上、ある程度コントロールせざるを得ない。それで石原さんとはかなり細かく話をしました。今撮っているシーンでは(キャラクターの素性を)どこまで出して良いのか、相当緻密にお願いしたんです。そして石原さんは見事にそれに応えてくれた。素晴らしく凄い俳優だと思います。本当に完璧でしたね。


とあるシーンでは、石原さんが感極まって思わず涙が溢れる瞬間がありました。そこもカメラに収めたのですが、物語の流れからすると(ネタバレになるため)どうしても涙が流れる直前で切らなければならない。こんなに素晴らしい演技なのに編集で切らざるを得ないなんて…、申し訳ない思いでいっぱいでした。


『そして、バトンは渡された』©2021映画「そして、バトンは渡された」製作委員会


これは脇を固める俳優さんも同じで、市村正親さんの役も相当難しいんです。ちょっと怪しく見えつつ、あんまり嫌らしく見えてもいけない。その微妙なニュアンスが見事でしたね。


今改めて思うのは、俳優を信頼して良かったなということです。「このシーンでは、(キャラクターの素性を)7割くらい出してください」と言われても、完成形を誰も観てないわけですから、その基準は難しいですよね。それは僕も同じで、あくまで編集を想定した“塩梅”であって、そこに理由なんか無いわけです。それを俳優の皆さんはそれぞれ解釈してくださって見事に表現してくださった。


この映画のキャッチコピーに「もう一度見て、もっと泣くーー。」とありますが、間違いじゃないと思いました。今日は上映チェックがあって半年ぶりに観直したら、ドキッとしましたから。




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