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北極で育ったウィル・フェレル、ニューヨークへ行く
クリスマス映画、ホリデー映画で大好きな作品はたくさんあるが、これは本当は昨年取り上げようと思っていた一本。『アイアンマン』を監督して以降今もMCUファミリーの一員としてお馴染み、昨年はドラマ『マンダロリアン』シーズン2で見事なエピソードを見せてくれたジョン・ファヴローによる、笑えてかわいく、ハートフルなホリデー作品『エルフ ~サンタの国からやってきた~』である。
ある年のクリスマスに孤児院を訪れたサンタクロースは、プレゼント袋に紛れ込んだ赤ちゃんをそのまま北極へ連れて帰ってしまう。30年後、バディと名付けられたその子はエルフの養父のもとですっかり大人に成長していたが、190センチの人間が生活するにはエルフの世界は窮屈な上、エルフほど手先が器用でないのでサンタのおもちゃ工房でもあまり役に立てない。自身はエルフのつもりでもなかなか周囲に馴染めないバディは、やがて本当の両親の存在を知り、父親を訪ねて大都会ニューヨークを目指して旅立つのだった。
異文化で育った者がニューヨークにやってくるのは定番だが、エルフというおとぎの世界の住人が主人公であるところは、アニメと実写が効果的に使い分けられたディズニー作品『魔法にかけられて』などとも通じる。また、普通ならサンタやエルフの暮らす世界に人間の子どもが迷い込みそうなところを、逆にエルフの「子ども」が人間の世界、それも大都会のNYにやってくるというのも逆転的発想でおもしろい。なんにせよNYは本当にお話になりやすい街である。
ウィル・フェレル扮するバディの可笑しさは言葉やイラストで説明しても野暮なだけなのだが、本当に見ていて退屈しないひとである。まるで大きな子どものようにはしゃぎまわるのだが(30歳で異様に子どもっぽいのは育ててくれたエルフが数百歳は生きる長寿だからなのか)、その不恰好な見た目やモーションは、周りのエルフたちが極端に小柄に合成されているためより際立って可笑しい。
エルフの格好のままNYに来てからはほとんど怪しげな挙動で、地下鉄出入り口の柵にへばりつけられたガムを食べて大喜びしたり(もっとないかと探す)、街頭で配られているチラシを何回も受け取ったり、大都会のど真ん中で撮っているので、どこまでが本物の雑踏なのかと見ていてヒヤヒヤするくらいだ。