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『ちょっと思い出しただけ』松居大悟監督 コロナ禍を描くのは必然だった【Director’s Interview Vol.179】

『ちょっと思い出しただけ』松居大悟監督 コロナ禍を描くのは必然だった【Director’s Interview Vol.179】

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コロナ禍を描くのは必然だった



Q:6年間の日常が積み重ねられますが、その積み重ねのディテール(二人の関係性、衣装、部屋の様子、近所の様子、友人の様子などなど)が観ていてとても沁みてきます。それらのデティールの詰めを含めて、脚本はどのように書かれたのでしょうか?


松居:ディテールに関しては脚本で書いているところもありますが、撮影前に美術・装飾・衣装のチームとはガッツリ話し合いました。部屋の様子は役者が出て来る前から映るので、部屋自体に芝居の要素がたくさんあるんです。何なら部屋の具合や衣装などで、それまでの1年間に起こったことが想像できてしまう。小道具に関しては自分でも色々書いていましたが、スタッフからもけっこうアイデアをもらいました。


Q:ロケーションにも時の流れを感じさせられます。


松居:そこもスタッフと話し合いました。ただ、「座・高円寺」だけは自分の中で決まっていて、絶対あそこで撮りたかったんです。タクシーでつけられてそのまま劇場につながっているところってあんまり無いんですよ。その点でも「座・高円寺」は必須でした。


そうなると自然と場所が高円寺中心になってくる。じゃあ高円寺だったらどこが良いのかと色々紐解いていきました。商店街も高円寺にあるアーケードです。あそこの場所がとても良かったので、最初は違う場所を想定していたシーンもあのアーケードにまとめていきました。



『ちょっと思い出しただけ』©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会


Q:撮影は各年まとめて場所ごとに撮られたのでしょうか。


松居:場所ごとに撮りましたが、その場所の中では割と脚本通りに撮っています。つまり時間軸で言うと、別れた後から撮り始めてだんだんと出会って行く流れです。各年によって違いを出したかったので、「この年は曇りがいいから」と雲を待ったりもしました。潤沢な予算規模の映画ではないので、けっこうギュッとまとめて撮りました。


Q:映画は、まさに今のコロナ禍から始まります。観ている自分たちと映画の世界が地続きのような気がして、これまでの映画にはない吸引力を感じました。このシーンを入れてみていかがでしたか?


松居:コロナになってから人に会えないことが多くなったので、それに伴って人のことを思い出すことも多くなりましたよね。それもあってこの話を書いたので、コロナを描くことは必然でした。この映画が公開する頃には、コロナがちょっと昔の話になっていればいいなと思っていましたが、残念ながらそうはなりませんでしたね。


また自分の中では、コロナ禍での「演劇」を描くことも重要でした。不要不急だと言われて劇場を開けられなかったり、客席を半分にして採算も取れずに公演したり、お客さんも開場中一言も喋らずにいてくださったりと、本当に辛い状況でした。そこを何とか救いたい思いもあったんです。


撮影でも、コロナは無かったことにする方が難しい状況でした。車の撮影をして走っていると、マスクをした人がたくさん歩いていて、その人たちはどうしても映ってしまう。ただ、マスク姿にはもう慣れているから、顔が見えないストレスは意外と少なかった気もします。それでもまぁ、マスクの画力はすごかったですね。





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