二人が出会ってきた人も印象に残したい
Q:二人の周囲にいる方々も魅力的です。ニューヨークの屋敷さんも一見嫌な役に思えますが、なぜかとても好きになってしまいます。
松居:屋敷は僕の友達なんです。彼に出てもらおうと思ってあの役を書いたので、あれだけは当て書きですね。
Q:ではあのシーンのセリフも脚本通り?
松居:はい。ただ最後の「夏、始まりましたわ」はアドリブですね。あそこは脚本上はすでにセリフが終わっているはずなんです(笑)。
Q:菅田俊さんは普段恐い役のイメージしかないので、今回の役は意外でした。
松居:普段は組長しかやってませんからね(笑)。僕は「バイプレイヤーズ」で菅田さんとずっと一緒だったんです。本人は腰が低くて本当に優しい人だったから、なんかその感じでかわいい菅田さんを撮りたいと思っていました。やってもらえるかなと心配でしたが、意気揚々とやってくださいました。
『ちょっと思い出しただけ』©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会
Q:國村隼さんも、普段の役とは少し違う印象がありました。
松居:國村さんは脚本を読んで爆笑したらしいです。「これはステレオタイプにやった方がいいのか、それとも普通にやった方がいいのか」と聞かれたので、「普通でお願いします」と伝えたら「それ聞いて安心した」と。國村さんの役には愛を語ってもらうのですが、そこに妙な説得力が欲しいなと思っていました。愛を語って“うすら寒く”はしたくなかったので、國村さんのおかげですごく優しいシーンになりましたね。
この映画は二人の話だけど、二人だけが印象に残るのは嫌だったんです。二人が出会ってきた人たちも印象に残った方が絶対にいいと思って、いろんな皆さんに出演していただきました。
Q:クリープハイプの尾崎世界観さんはジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て曲を作られましたが、松居監督自身が影響を受けた監督や映画について教えてください。
松居:たくさんいますが、自分の中で一番大きいのは相米慎二監督ですかね。ユーロスペースの特集上映やDVDレンタルでよく観てました。あとはやっぱり北野武監督ですね。すごく好きです。
映画って、次の瞬間何が起きるかわからない自由さがあって、人間のダイナミックさみたいなものも描かれている。そこに何だか感動するんですよね。
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監督・脚本:松居大悟
1985年11月2日、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。12年、初監督作『アフロ田中』が公開。その後、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13)『スイートプールサイド』(14)など作品を発表し、『ワンダフルワールドエンド』(15)で第65回ベルリン国際映画祭出品、『私たちのハァハァ』(15)でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2冠受賞。このほか『アズミ・ハルコは行方不明』(16、第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品、ロッテルダム国際映画祭2017出品)、『君が君で君だ』(18、上海国際映画祭 ガラ部門正式出品)、テレビ東京「バイプレイヤーズ」シリーズのメイン監督も務める。また『アイスと雨音』(18)では1か月間の物語を74分1カットで撮る斬新な手法も話題となった。2021年は、監督・脚本を務めた『くれなずめ』、演出を手掛けた舞台PARCO PRODUCE『Birdland』などがある。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『ちょっと思い出しただけ』
2022年2月11日(金・祝)公開
配給:東京テアトル
©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会
公式サイト:choiomo.com
公式Twitter/Instagram:@choiomo_movie