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『余命10年』藤井道人監督 100年先も残る映像を撮るための「無茶」【Director’s Interview Vol.187】

『余命10年』藤井道人監督 100年先も残る映像を撮るための「無茶」【Director’s Interview Vol.187】

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映画監督は皆、自分の作品性に懐疑的



Q:『宇宙でいちばんあかるい屋根』や『余命10年』もそうですが、藤井監督は意識的にジャンルやゾーンを限定しないように動いている気がします。


藤井:巡り合わせもありますが、そうした意識はありますね。映画を作るって、ともすると妄信的になってしまうというか「こうやればまた仕事が来るかも」「自分の“色”って何だろう?」みたいなことを考えている自分が、あるときすごく恥ずかしくなったんです。


世の中には様々な喜怒哀楽があるのに、自分を限定して「僕はこうだから」となりたくなかったのと、あくまで自分はまだチャレンジャーであるという意識がすごくあるから、同じジャンルに括られたくないんです。たとえばウォン・カーウァイ監督が『グランド・マスター』(13)を撮ったとき、ざわついたと思うんです。そういうのがカッコいいと思うんですよね。イニャリトゥ監督が『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)を撮ったこともそう。やっぱりみんな自分の作品性・作家性というものに懐疑的であって、カテゴライズされたものから脱却したいとは常々思っていると思います。


僕自身『ヤクザと家族 The Family』(21)を撮ったときには、「もう『新聞記者』の藤井道人と言われたくない」という気持ちがあったし、『ヤクザと家族 The Family』と対になる作品として『余命10年』ができた。どちらも長い年月を描いた対話的な作品ですが全く違うものですし、多面的な要素を含んだ企画にチャレンジする方が楽しいですね。



『余命10年』©2022映画「余命10年」製作委員会


Q:それにはやはり、プロデューサーの力が必要不可欠ですよね。


藤井:まさにパートナーワークだと思っています。今回も「何回けんかするの?」と思った時もありましたが(笑)、そういう人がいないと自分自身も張り合いがないし、よりどころがない感覚になってしまう。人と人の仕事ですから支え合いたいと思いますし、自分が言ったことを全部やってくれるのではなく、プロデューサーたちが考えてくれていることに最大限応えたいと思います。誰かに「藤井監督」と呼ばれるから僕は監督でいられるので、精一杯頑張りたいですね。


この映画はすごく大きな規模で公開させてもらえるので、年に何本も観ているような映画ファンの人たちだけではなく、今まで僕の作品を観たことがない地方にお住いの方や、年に1回しか映画館を訪れない方たちにも届けたいと思っています。僕らが昔は少年少女だったように、原体験になるような作品を目指したいと考えて取り組みました。


だからこそ、その目標に向かって色々とチューニングしてくれる存在はとても大事だなと、改めて感じましたね。




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