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『ムクウェゲ 「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』立山芽以子監督 一人の医師を通して見る、コンゴの過酷な現実と我々のつながり【Director’s Interview Vol.188】

『ムクウェゲ 「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』立山芽以子監督 一人の医師を通して見る、コンゴの過酷な現実と我々のつながり【Director’s Interview Vol.188】

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コンゴと日本の意外なつながり



Q:コンゴでは武装勢力がレアメタルを支配するために、レイプの恐怖で住民を支配するということを初めて知りました。これはコンゴ特有の事情なのでしょうか。


立山:なぜあの地域でそういうことが起こるのか、研究している方もいますが起源はよく分からないそうです。ただムクウェゲ先生は、「コンゴ人が野蛮だからだ」「アフリカ人は野蛮なことをするんだ」といった議論になると、すごく怒ります。そういうことではない、と。それは人間の本性に隠された要素で、決してコンゴ人が遅れているからではない、という意味のことを言われます。


Q:ムクウェゲ医師も言っていますが、コンゴの経済的な問題をまず解決する必要性があると思うのですが、あまり支援は進んでいないようですね。


立山:ムクウェゲ先生も言われるように、コンゴが今のような状態である方が都合が良い、という考えも国際社会の中にあると思います。もしコンゴが経済的に自立し、自由にレアメタルを掘れなくなると単価が上がるかもしれません。そうなるとスマートフォンなどが、安く作れなくなる可能性もある。しかも規制すると困るのは実は日本などの先進国だったりするわけです。そこから、ブラックホールみたいな国があるほうがいい、という論調も生まれてしまう。



『ムクウェゲ 「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』© TBSテレビ


Q:武装勢力が闇ルートで売った資源を、我々も使っている可能性があるわけですね。


立山:そうです。映画でも紹介していますが、コンゴ政府が資源にタグをつけて管理している正規品もあるので、全てが違法なものではありません。日本の企業も努力して正規ルートのものを使うようにいしてるし、アメリカでも法律で規制しています。でもやはりどこかで紛れ込む場合があると思います。


Q:コンゴのローカルな話かと思ったら、日本とも深い関係がある内容で驚きました。広島に投下された原子爆弾に使われたウランは、コンゴで採掘されたものだったこと。今言った、コンゴで違法に採掘されたレアメタルがスマートフォンなどに使われる可能性について、それを授業で学ぶ日本の高校生たちも印象的でした。そういった要素を入れ込む構成は、かなり意識されたのでしょうか。


立山:そうですね。海外を舞台にしたドキュメンタリーは、「ふーん、世界には大変な人たちがいるんだね」「ああ、日本人でよかった」という反応で終わりがちなんです。私はそれが物足りないと思っていました。この作品に限らず、今の自分たちと視点をつなげるという構成は、今まで作った作品でも必ずどこかにありました。


日本の高校生の授業を取材したのも、私たちとのつながりを意識させる構成の一環です。あの授業の教材を作った八木さんという方は、ムクウェゲ先生の講演を聴いて、自分が何かしなくてはと思い教材を作りました。その教材を社会科の先生が見て「これは子どもたちに教えるべきだ」と思われて、あの授業をしています。小さいですが、ムクウェゲ先生の言葉や行動が波紋のように広がっていく様子を描きたかったんです。





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