決まった場所でどう撮るか
Q:予告編にも出てきますが、桜を背景に小松さんがビデオカメラを構えるショットは思わず息を呑むほど美しいです。かなりの望遠レンズを使われているかと思いますが、あのショットはどのように撮られたのでしょうか?
今村:そうですね。結構な望遠で撮っています。あそこはまさに、脚本を読んで浮かんできた画ですね。あのシーンは絶対にあの画だなと思っていて、僕の中では「ここにタイトルを乗せてくれ!」ぐらいの勢いでした。だからあれは、芝居の感情を踏まえたセッションで出てきたものではなく、事前に計算してとった写真的な画です。結構な距離が必要なので、ああいうショットが撮れる場所はなかなかないのですが、運良く場所にも恵まれました。
『余命10年』©2022映画「余命10年」製作委員会
Q:ロケーションはどのように決めているのでしょうか。
今村:ロケハンには行きますが、いざロケーションを決めるときには、僕はあまり意見しません。基本的には話の流れの中があって、俳優がいて、適した場所が決まっていく。それはやはり監督がイメージするものです。僕は決まった場所でどう撮っていくかを考えていきます。同じように人の立ち位置や導線も藤井さんに決めてもらって、それを僕がどう撮るか考えています。もちろん僕の視点で良い構図を撮ることは可能ですが、重要なのはそこではないんです。
また、どんなロケーションだったとしても、いいカットがたくさん撮れるわけではない。どこがいいアングルになるかは、ギリギリまで探しています。カメラをほんとちょっと上に振るか、下に振るかだけでも、その画の密度は変わってくるんです。