藤井道人監督作品の魅力の一つ、圧倒的な画のクオリティ。それを生み出しているのが、撮影監督の今村圭佑だ。最新作の『余命10年』も息を呑むような美しいカットに溢れ、作品のレベルを確実に押し上げている。予算規模を問わず作品のクオリティを底上げするショットの数々。今村圭佑は現場で何を見つめ、何を切り撮っているのか? 話を伺った。
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質感は技術力、距離感はセンス
Q:多くの藤井作品で撮影を担当されていますが、本作は違う方が撮ったのかと思うほど、これまでの作品と印象が違いました。今回の撮影にあたって藤井監督とどんなことを話されたのでしょうか?
今村:藤井さんは大学の先輩で、学生時代から一緒に映画を撮っていますが、打合せを重ねるようなことはあまりないですね。脚本からイメージした映像を監督に伝えて、それで撮影に望むことが多いです。
印象が違うとありましたが、実は今回そういう思いで撮ったところがあります。今までの映画は、自分たちの顔が画に見えるような意識で撮っていることも多かった。しかし今回は、原作が自叙伝的な小説ということもあり、自分たちはなるべく画に出ない方が良いと思ったんです。
『余命10年』©2022映画「余命10年」製作委員会
Q:印象が違ったとはいえ、画のクオリティは変わらず圧倒的に高い。あのクオリティはどのように生み出されるのでしょうか?
今村:トーンや映像の質感って、センスによるところが大きいと思われがちですが、多分そうではなく、それまで積み重ねてきた技術力の賜物だと思うんです。逆に、人物や風景とカメラの距離感をどう捉えるかは感覚的なものなので、そこはその人のセンスかなと思いますね。
Q:撮影しているときは編集のことも頭にあるのでしょうか。
今村:そうですね。ほぼ編集のことしか考えてないかもしれません。編集って客観的にやるものなので、どのカットをチョイスするかはもちろん人それぞれですが、それでも「こういう“つなぎ”になると良いな」と思いながら撮っています。正直「ここ使え!」みたいな感じもありますね(笑)。