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『流浪の月』ホン・ギョンピョ撮影監督 初の日本映画でカタルシスを感じた瞬間【Director’s Interview Vol.205】

『流浪の月』ホン・ギョンピョ撮影監督 初の日本映画でカタルシスを感じた瞬間【Director’s Interview Vol.205】

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『パラサイト』の後、次々と来るオファー



Q:『流浪の月』の仕事は『パラサイト』の撮影中に決まったとのことですが、『パラサイト』がアカデミー賞作品賞などに輝いた後は、さまざまなオファーが届いたのではないですか?


ギョンピョ:『バーニング』を撮り終えた頃に、すでに海外からコンタクトがいくつかあったので、その時点でエージェントに所属しました。ポン・ジュノ監督と同じエージェントです。それからしばらく、韓国の名だたる監督との仕事や、『流浪の月』、『ベイビー・ブローカー』(22/是枝裕和監督)のように海外の監督の作品も続いている状態です。たしかに『パラサイト』のアカデミー賞はエージェントにも朗報だったでしょう。エージェントとの契約、『パラサイト』のアカデミー賞受賞と続いたことで、海外からオファーとして脚本が次々送られてくる状態です。


Q:そのシナリオを読んで引き受けるかを判断しているのですか?


ギョンピョ:シナリオと一緒に、製作の予算や、監督のフィルモグラフィーなどの情報が届きます。それらすべてを精査して、もし興味が湧けば、まず監督と直接話して、そのうえで引き受けられるかどうかを決めています。


『流浪の月』(c)2022「流浪の月」製作委員会


Q:そもそも、なぜ撮影監督になったのでしょうか。


ギョンピョ:専攻は経済学でしたが、若い時代から映画が大好きで、「映画を観る」ことが勉強になっていたと思います。その後、カメラを回すこと自体に興味をもち、実際にやってみたら面白くて、これこそ自分の目指す道だと自覚しました。仕事という感覚ではなく、心から楽しめる作業ということでキャリアをスタートできたのは幸運でしたね。


Q:以前に監督としてクレジットされた短編もあるようですが、この先監督へ進出する意向もあったりするのですか?


ギョンピョ:あの短編(2010年の『Bang』)は撮影監督としてデビューして間もない時期に、iPhoneで撮った作品です。じつは別の監督がカメラを紛失し、スケジュールが合わなくなったということで、突然4日前に依頼が来て慌てて取り掛かりました。ですから監督作品があると言われても、ちょっと恥ずかしい(笑)。この先も監督をやるつもりはありません。撮影監督としてキャリアを積んでいきたいです。


Q:では最後に、撮影監督として理想としている作品を挙げてみてください。


ギョンピョ:うーん、たくさんありすぎますね(笑)。最近思うのは、Netflixなどの配信でクラシック作品も観ることができるようになり、『アラビアのロレンス』(62)や『地獄の黙示録』(79)などを改めて観直すと、実写では不可能としか思えない映像を発見します。なぜあんな映像が撮れたのか。どういう方法を使ったのか。そんなことに考えを巡らせることが多いです。



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撮影:ホン・ギョンピョ

89年、『墜落するものには 翼がある』の撮影助手として初めて映画撮影に参加する。98年、インディペンデント映画『夏雨燈』で撮影監督デビュー。以降、『ブラザーフッド』(04)『母なる証明』(09)『哭声/コクソン』(16)『バーニング 劇場版』(18)など、韓国映画史に残る傑作を次々と手がける。なかで、19年の『パラサイト 半地下の家族』はカンヌ映画祭で韓国映画史上初めてのパルム・ドール(グランプリ)を、また非英語作品として史上初めての米国アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞に輝いた。19年、大韓民国文化大衆芸術賞で大統領表彰。



取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。




『流浪の月』

5月13日(金)全国ロードショー

配給:ギャガ

(c)2022「流浪の月」製作委員会

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