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『マイスモールランド』北原栄治プロデューサー  大きな柱は若手を育てること【Director’s Interview Vol.207】

『マイスモールランド』北原栄治プロデューサー  大きな柱は若手を育てること【Director’s Interview Vol.207】

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時間がかかる脚本作り



Q:リアルな問題を題材に脚本を作ることは、かなり難しかったのではないでしょうか?


北原:どうしてもバランスが難しいんですよ。例えば、今の日本の入管制度の現状やクルドの方たちが置かれている状況など、事実として知らせたいことを説明すればするほど、フィクションとしての物語の部分が弱くなる。楽しんでもらえる物語の中に、知らせたい情報をどう出していくか、そこはすごく難しかった。そこの部分は川和田がよく頑張ったと思います。


Q:脚本はどれくらい稿を重ねたのでしょうか。


北原:稿は結構重ねましたね。川和田は必死に書いてるから締め切りを守らないんですよ(笑)。「脚本を読んでもらわないとお金を集められないから、ここまでに皆に読ませるよ」って言っているのに平気でぶっちぎるんです。「締め切りを延ばすときは連絡をください」って、そんな時期もありましたね(笑)。まぁそれは、少しでも脚本を良くしたいから「もうちょっと、もうちょっと」ということなんですけどね。でも締め切りは守ろうよって(笑)。そうやって紆余曲折はありましたが、それは川和田に限った話ではないし、映画は脚本が面白くないとどうしようもない。中途半端な脚本で撮るとつまらなくなりますから。


また、脚本の進み具合を踏まえて撮影のタイミングを決める必要があります。脚本の完成が見えてきたくらいで「1年後のこの辺りで撮影ね」とようやく逆算できるようになる。だから「3ヶ月後に撮るから今すぐ脚本あげろ」と言われても、それはやっぱり無理なんです。脚本はとにかく時間がかかりますね。



『マイスモールランド』北原栄治プロデューサー


Q:広瀬監督の『夜明け』(18)では、西川監督が脚本のアドバイスをされたそうですが、今回はどうでしたか。


北原:西川は今回もアドバイスしていました。同じく是枝もアドバイスしています。川和田はちゃんと聞く耳を持ってやっていました。ただ川和田は非常に優等生っぽいところがあるので、人の意見をすごく気にするところがある。あまり気にし過ぎても良くないから「その意見はあんまり気にしすぎなくていいよ」と僕から言ったりもしました。


新人だし、アドバイスされた修正内容が本当に良いのか悪いのか判断できない。だから僕は「やってみてうまくいかなかったら元に戻していいよ」とも言いました。僕の立場は、監督たちの考えていることをどういう上手く引き出せるか、どう寄り添いながら作品を良くしていくか、それを伴走者として作品の最初の企画から最後の公開までやっていきます。それが出来なければ、僕自身いる意味がない。今回は最終的に川和田はすごく良い取捨選択ができていたと思いますね。


是枝や西川からの意見に左右されることもありますが、言われた通りやっても、うまくいかないときはうまくいかない。それは僕が言った意見もそうだし、他の誰かが言った意見もそう。取捨選択はすごく大切だと思います。




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