企画段階からブレない
Q:『マイスモールランド』『夜明け』と、分福からデビューされる監督たちの作品はデビュー作とは思えぬほどクオリティも高く、監督たちの思いも映画から伝わってきます。企画プロデューサーの手腕も大きいのではないでしょうか。
北原:いやいや僕の力なんてミジンコみたいなものです(笑)。手を加えすぎてデビュー作が変にまとまっていたら嫌だなぁと思ったりもするんです。いい意味で稚拙だったり幼かったり、うまくいってない感じもあって、それら全部含めてデビュー作なんじゃないかなと。最初からすごい手練れ感があったりすると「嘘だ〜!」って思っちゃいますよね(笑)。
今回はカメラマンを始め優秀なスタッフに集まってもらえたので、基本的に大きく間違えることはないと思ってました。やりたいことや全体のトーンを含めて、川和田の持っている若さや経験のなさがいい塩梅で出たかなと思っています。
Q:カメラマンは四宮秀俊さんです。スタッフは監督からの希望ですか?
北原:はい。四宮さんの撮る画がとても良いからぜひお願いしたいと、川和田の最初からの希望です。四宮さんは非常に柔軟だし撮る画も間違いがない。素晴らしいカメラマンだと思います。四宮さんや近藤龍人さんなど、今40代半ばのカメラマンは優秀な人が揃っていますよね。
『マイスモールランド』©2022「マイスモールランド」製作委員会
Q:川和田監督は、企画段階では是枝さんをはじめとする分福の皆さんに囲まれ、撮影時には四宮さんをはじめとするベテランスタッフに囲まれるわけですが、その中で監督としてブレずにやり続けるのは、新人だと結構難しいのではないかと思います。
北原:最初の企画段階から相当芯が強いものを出してきたので、彼女の中でブレはなかったと思います。それが上手くいった大きな要因ですね。目指すものが最初の段階でしっかりあったことが大きかった。クルド人キャストの考え方など途中で大きく変わったこともありましたが、やりたいことがブレなければ大丈夫という確信を持っていたと思います。それがないと新人のデビューは難しいですね。
Q:北原さんは、寄り添いながらずっと横で見ていたわけですが、川和田監督は悩んだりはされなかったのでしょうか。
北原:常に悩んでいますよ(笑)。「うーん、うーん」ってずっと言ってますからね。「本当にこれでいいのかな」って悩んで締め切りが延びたんですね(笑)。だから悩んでないときはなかったんじゃないですかね。出来上がった後も悩んでたし、常に唸っていました。