すばらしき俳優たち
Q:オデッサ・ヤングとジョシュ・オコナーの素晴らしさはもちろんですが、脇を固めるコリン・ファースやオリヴィア・コールマンも流石の存在感を発揮します。それぞれの方の印象はいかがでしたか?
エヴァ:オデッサ・ヤングが成し遂げた演技は素晴らしかったですね。彼女は体の芯がしっかりしていて、静かな強さを持っているんです。今までの映画に出てきた“強い女性像”は、やたらと騒がしかったり神経質だったりするような傾向があったと思いますが、オデッサはそれとは真逆で、ジェーンに備わった静かな力強さを自然に出せる人でした。繊細でエモーショナルな感情の表現も見事だったと思います。
ジョシュ・オコナーについては、彼が出ている『ゴッズ・オウン・カントリー』(17)を観たときに「なんて多様性のある俳優なんだ」と感銘を受けたんです。それが出演をお願いしたきっかけでした。様々なものを内に秘めた多様性があることは、俳優の資質としては一番素晴らしいことだと思います。撮影現場でオデッサとジョシュが質問してくる内容は、ちょうど私も疑問に思っていたところだったりして、二人とはすごく波長が合いましたね。
『帰らない日曜日』© CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS SUNDAY LIMITED 2021
コリン・ファースについてはコメントの必要がないくらい、見たそのままの素晴らしい俳優でした。有名な俳優はエゴが強かったり気難しかったりする傾向が往々にしてあるのですが、コリンはとにかくシンプルで、それでいてものすごくインテリジェント。皆に対しても優しくて博愛的な人でした。彼自身が「映画に出てくる素晴らしいキャラクター」のような人なんです。
オリヴィア・コールマンは、例えるならレースに出るサラブレッドのような俳優でした。常に準備が出来ていて、ゲートが開くとすぐに走り出せるような状態なんです。だから彼女の場合は、エネルギーを費やしすぎると良くないのでリハーサルをあまりせずに本番に挑みました。オリヴィア演じるクラリー夫人が「あなたは孤児で何も持っていないのが、かえって恵まれているのよ」と、ジェーンに向かって言う印象的なシーンがあるのですが、その撮影でテイクを重ねるたびに、オリヴィアはさらに感情を込め目からはどんどん涙を溢れ出させる。彼女はまるで蛇口のように感情を溢れ出すことが出来るんです。こちらもかなり集中して向かい合わないといけない相手でしたね。
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Vittorio Zunino Celotto
監督:エヴァ・ユッソン
1977年、フランス、ル・アーヴル生まれ。フランス、アメリカ、イギリス、スペイン、プエルトリコなど様々な国で暮らし、フランス語、スペイン語、英語の3か国語を操る。演劇学校に通い、パリのソルボンヌ大学で英文学と心理学を学んだ。その後、英文学の修士とスペイン文学の学士 も取得。そして、ロサンゼルスにあるアメリカン・フィルム・インスティテュートで演出の修士を取得した。2013年に52分の英語のコメディ“Those For Whom It’s Always Complicated”(原題)を制作し、フランスのテレビで放映された。2015年に制作した初の長編映画『青い欲動』はトロント国際映 画祭に出品され、レザルク・ヨーロッパ映画祭では最優秀審査員賞含む3部門で受賞、一気に国際的な注目を集める。2本目の長編映画『バハールの涙』(18)はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品される。テレビドラマの監督としても活躍しており、アマゾン・プライムで 配信中のドラマシリーズ「ハンナ~殺人兵器になった少女~」(19〜)のシーズン2で3つのエピソードを手掛けている。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『帰らない日曜日』
5月27日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
配給:松竹
© CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS SUNDAY LIMITED 2021