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『日の名残り』誰の人生にもたとえられる、アンソニー・ホプキンスが体現する“滅私奉公”的生き方

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『日の名残り』誰の人生にもたとえられる、アンソニー・ホプキンスが体現する“滅私奉公”的生き方

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『日の名残り』あらすじ

1958年。ダーリントン邸の老執事スティーブンスのもとに、以前共に屋敷で働いていた女性ミス・ケントンから一通の手紙が届く。懐かしさに駆られる彼の胸に20年前の思い出が蘇る。当時、主人に対して常に忠実なスティーブンスと勝気なケントンは仕事上の対立を繰り返していた。二人には互いへの思慕の情が少しずつ芽生えていたが、仕事を最優先するスティーブンスがそれに気づくはずもなかった。そんな中、ケントンに結婚話が持ち上がる。それを知ったスティーブンスは激しく動揺するが…。


Index


アンソニー・ホプキンスの代表的な一本



 83歳にして『ファーザー』で2021年のアカデミー主演男優賞受賞となった英国の名優、アンソニー・ホプキンス。主演男優賞候補では最高齢のノミネート、および受賞だという。今や世界的に俳優も高齢化の傾向があり、シニアの俳優が男女共に活躍しているが、それでも80代での主演はさすが、というべきだろう。しかも、本編をみるとほぼ出ずっぱり。彼が全編を支える作品になっている。


 ホプキンスが初めてオスカー候補となったのは、91年の『羊たちの沈黙』で人食いレクター博士を演じたとき。出演時間はあまり長くなかったが、役のインパクトがすごくて、映画を見ている間中、その気配を感じられる演技だった。


 「この役をぜひホプキンスに!」と、スタジオ側に提案したのはジョナサン・デミ監督だ。94年に出たホプキンスの評伝本“Anthony Hopkins:In Darkness and Light(Pan Books刊)によると、レクター博士はアメリカ人という設定ゆえ、英国人が演じることにスタジオ側は難色を示したという。しかし、『エレファント・マン』(80)でのホプキンスの演技を評価していたデミは、ぜひ彼に演じてほしいと考え、スタジオ側を説得したそうだ。「人間的な魅力と知性を持った男優が必要だと思っていた。レクターは油断できない人物で、そこに怖さがある。人間性と知性が歪んだ形で出ている人物像だ」。そんなデミの証言が本の中で引用されている。


 デミの指摘は正しく、人間的な魅力と知性を持ったホプキンスが演じることで映画は画期的な成功を収めた。ホプキンス自身は、同じ頃出演したハリウッド映画としては、マイケル・チミノ監督の『逃亡者』(90)の方により大きな期待を寄せていたようだが、チミノ作品は不発に終わった。そして、彼より知名度が低かったデミの映画の方が評判となり、オスカーの作品賞を受賞。ホプキンス自身も主演男優賞を手にした。


『日の名残り』予告


 そんな彼が2度目のオスカー候補となったのは『日の名残り』(93)で英国の執事を演じた時である。カズオ・イシグロのブッカー賞受賞小説(89年発表)をジェームズ・アイヴォリー監督が映画化したもので、その年のオスカーでは主演男優賞だけではなく、作品賞、監督賞、脚色賞、主演女優賞等、8部門のノミネートとなっている。


 アイヴォリー監督は『眺めのいい部屋』(85、オスカーの作品賞候補)や『モーリス』(87)などの作品で知られ、文学の映画化作品では定評があったが、最初から彼が監督だったわけではないようだ。




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