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『わたしを離さないで』心をかきむしる、「作り物」たちの残酷な人生

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『わたしを離さないで』心をかきむしる、「作り物」たちの残酷な人生


※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


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キャスト・スタッフが軒並みブレイク



この命は、生まれたときから自分のものではない。

悲しみさえ、与えられない。

感情は全て、物語の外にある。


 『わたしを離さないで』(10)は、不思議な運命をたどった映画だ。全米公開は2010年、日本公開は2011年3月26日。『ザ・ファイター』(10)や『SOMEWHERE』(10)と同時期に(ひっそりと)公開された。製作費は概算1,500万ドルに対し、世界興行収入は約945万ドル(参照:Box Office Mojo)。数字だけを見ればしっかり赤字である。


 ブッカー賞の最終候補になったカズオ・イシグロの原作を、キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイの共演で映画化。今でこそ豪華キャストだが、当時はまだ日本でも世界でも「映画ファン必見作」というような立ち位置ではなかった。注目度は、興行成績にも表れている。しかし、この作品は公開後に長い時間をかけて成長していくのだ。


 『17歳の肖像』(09)でアカデミー賞主演女優賞候補に選出されたキャリーは、この作品の後『ドライヴ』(11)『SHAME -シェイム-』(11)『華麗なるギャツビー』(13)と出演し、大きく飛躍していく。アンドリューは『ソーシャル・ネットワーク』(10)『アメイジング・スパイダーマン』(12~14)で世界規模の人気を獲得。キーラは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ(03~17)で既に知名度が高かったものの、『プライドと偏見』(05)『つぐない』(07)などコスチューム・プレイ(時代劇)のイメージが強かった。しかし、本作を経た後に『はじまりのうた』(13)のミュージシャン役で新たな魅力を開花させる。



 メインの3人ばかりではない。大女優シャーロット・ランプリングは『さざなみ』(15)でアカデミー賞に初ノミネートを果たし、サリー・ホーキンスは『ブルージャスミン』(13)、そして何と言っても『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)がある。脚本・製作総指揮を務めたアレックス・ガーランドは『エクス・マキナ』(15)で監督デビューを果たし、絶賛を浴びた。映画『わたしを離さないで』では製作総指揮も担当した原作者カズオ・イシグロは、2017年にノーベル文学賞を受賞する偉業を成し遂げた。


 日本での動きも興味深い。映画に続く形で2014年に蜷川幸雄によって舞台化され、2016年にはテレビドラマ化。これらの存在により、後から映画版の存在を知った方も多いのではないだろうか。


 本作は、アカデミー賞をにぎわせた『ブラック・スワン』(10)と『127時間』(10)と同じFOXサーチライトの2010年ラインナップであり、“質保証”においては元々申し分なかったのだが、関わった面々が軒並み成功を収めたことで、「映画好き・文学好きなら知っている良作」から「記念碑的な逸品」へと成長を遂げた映画なのだ。



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