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『日の名残り』誰の人生にもたとえられる、アンソニー・ホプキンスが体現する“滅私奉公”的生き方

©1993 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

『日の名残り』誰の人生にもたとえられる、アンソニー・ホプキンスが体現する“滅私奉公”的生き方

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マイク・ニコルズからアイヴォリーへ



 アメリカ出身のアイヴォリー監督は、インド出身のプロデューサー、イスマイル・マーチャントと組んで、61年に“マーチャント・アイヴォリー・プロダクション”を設立。ふたりは公私ともに渡るパートナーとなり、05年にマーチャントが他界するまで44年間、一緒に映画作りを続けた。その結果、ギネスブックに「インディペンデント映画界で最も長いパートナーシップ」として認定されているという(先駆的なLGBTのカップルで、その後、アイヴォリーは『君の名前で僕を呼んで』(17)でオスカーの脚色賞も手にしている)。


 マーチャントが94年に東京国際映画祭(ヤングシネマ・コンペティション)に自身の監督作『詩人の贈りもの』(94)を出品するため来日した時、彼に取材をしたことがある。笑顔がたえず、とても気さくな人柄だったが、その時、『日の名残り』の製作のいきさつも話してくれた。


 アイヴォリーは原作本が気にいってすぐに映画化を考えたそうだが、すでに別の監督と脚本家で映画化の話が進んでいた。監督はマイク・ニコルズ、脚本家は劇作家のハロルド・ピンターだった。すでにピンターの脚本まで完成していたという。

「ところが、いくつか偶然が重なって、ニコルズからジム(アイヴォリーの愛称)のところに映画化の話がきた。すごくラッキーだった」とマーチャントは語った。ニコルズはその後製作者としてこの作品に参加した。



『日の名残り』©1993 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.


 キャストに関しては「アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンは本当にすばらしかった」と絶賛していた。マーチャント&アイヴォリーは、すでにこのふたりを『ハワーズ・エンド』(92)で起用していた。日本のミニシアターで『日の名残り』が大ヒットしたことを知らせたら、「おそらく、この映画で描かれた“奉仕”というテーマが日本人にも響くものがあったんだろうね」という答えが返ってきた。確かに“滅私奉公”の生き方を貫く主人公の執事は、少し古い日本的な生き方に重なるものがあって、日本人にも受け入れやすかったのだろう。


 脚本はマーチャント・アイヴォリー・プロの常連であるインド系の作家、ルース・プラバー・ジャブバーラが担当。ジャブバーラはE・M・フォースター原作の『眺めのいい部屋』や『モーリス』の脚本も担当していたが、『日の名残り』には大戦前夜の1930年代と大戦後の50年代の英国の社会の変化を盛り込みながら、奥行きのあるシナリオを書き上げている。




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