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『Zola ゾラ』ジャニクサ・ブラヴォー監督 ポップな表現に込めた意図とは【Director’s Interview Vol.235】
2015年、一人の黒人少女が自らの実体験をTwitterに投稿し、大きな話題となったスリリングな<148のツイート>をA24が映画化。実話を基にしたこの物語、まさに「嘘のようなホントの話」のごとく予測不能なロードムービーが怒涛の勢いで展開していく。監督はmiu miuの女性監督シリーズに抜擢されるなど、各界から注目を集める気鋭の黒人女性監督ジャニクサ・ブラヴォー。その類稀なビジュアルセンスは新たな時代を感じさせつつも、その裏にある計算され尽くしたコンセプトを知ると、監督の真の力量に気付かされることになる。
ブラヴォー監督がこの映画で意図したものとは?A24との仕事の感想は?監督に話を伺った。
『Zola ゾラ』あらすじ
ウェイトレス兼ストリッパーのゾラはレストランで働いていたところ、客としてやってきたステファニと「ダンスができる」という共通点があることで意気投合し、連絡先を交換する。すると翌日、ステファニから「ダンスで大金を稼ぐ旅に出よう」と誘われ、あまりに急なことで困惑するも結局行くことに。これが48時間の悪夢の始まりだとは露知らず……。
Index
あえて誇張したキャラクター
Q:主人公のステファニ、ステファニの彼氏デレク、ポン引きのX、そしてXの彼女と、ゾラをとりまく人間たちが強烈です。脚本を書く際に各キャラクターは実際の人物から脚色されたのでしょうか?
ブラヴォー:物語は実話を基にしていますが、出てくるキャラクターは実際の人物よりも誇張して描いています。というのも、ゾラ以外の人たちからは映画化の権利をもらえなかったんです。そんなこともあり、本人たちに似ないようにあえて誇張しました。もし本人たちと似ていたとしても、それはたまたまそうなっただけです(笑)。
そもそも私にとってのゾラの世界は、この地球ではなく、別の地球で起こったような物語です。それをちょっとシュールで不条理で、カートゥーンっぽいアプローチで描いたので、この世界観やキャラクターたちは、現実的でないと感じる部分もあるかもしれません。
『Zola ゾラ』© 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved
Q:前述のキャラクターたちの行動が短絡的すぎて、見ていて笑ってしまいます。一方で当事者のゾラを思うと気の毒な感じがして、笑うのがためらわれた箇所もありました。アメリカでの反応はいかがでしたか?
ブラヴォー:2020年の1月にサンダンス映画祭で上映されましたが、アメリカでの劇場公開は2021年の7月でした。サンダンスでは満席で楽しんでもらえましたが、その後パンデミックになってしまったので、入場制限がある中での劇場公開でした。この映画は、スクリーンに向かって叫んだりして楽しみながら観て欲しかったので、そこはすごく残念でしたね。ただその後、周りの人がこの映画のことを熱く語ってくれたり、私に好意的に話しかけてくれることもあり、この映画が自分の求めていたところに着地した実感はありました。本当ならば観客と一緒に楽しむことでそれを感じたかったのですが、状況が状況だけにそれは叶いませんでした。
ちなみに私はレビューを読みません。良いレビューだけを読めれば良いのですが、悪いレビューも読まないと真実はわからない。だったら最初から読まないでおこうかなと(笑)。