2026.01.31
Index
- 当事者だった監督が伝える戦場のあるがまま
- ほぼリアルタイムで前線に放り込まれる映画体験
- 作品の客観的視点を取り巻く二重、三重の皮肉
- イラク戦争が“大義なき戦争”と呼ばれた背景
- 2人の監督は同じ方向を向いているのか?
- 観る側の知識、思考、信条が問われる映画
当事者だった監督が伝える戦場のあるがまま
『ウォーフェア 戦地最前線』(25)が、「戦争映画」から、同ジャンルにつきまとうメッセージ性やアクション映画的な娯楽性を極力引き剥がす試みであることは、共同監督を務めたアレックス・ガーランドとレイ・メンドーサの双方が再三語っている。実際、米海軍のエリート部隊、ネイビーシールズの一員だったメンドーサが“かつて体験した戦場”を限りなく忠実に再現する試みは、戦場描写において圧倒的な現実味をもたらした。
きっかけはガーランドの前作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)だった。軍事コンサルタントを務めていたメンドーサは、大統領が立てこもるホワイトハウスに反政府軍が突入するシーンで、実戦経験のある元兵士たちを起用し、まるで現実に行われるミッションであるかのようにアレンジしたのだ。
ガーランドはそこに戦争映画の新しい可能性を見出した。メンドーサの体験や知識があれば「戦場の姿をそのまま映像に移し替えることができるのではないか」と考えたのだ。映画的な脚色を加えることなく、ただただ戦場とはどういうものなのかを正確に伝えることができるなら、これまでになかった形で戦争の真実に迫ることができるはず。また、従来の戦争映画の不正確な描写に不満を持っていたメンドーサもガーランドの趣旨に同調。異例の共同監督タッグが組まれることになった。

『ウォーフェア 戦地最前線』© 2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.
ほぼリアルタイムで前線に放り込まれる映画体験
ガーランドはレオナルド・ディカプリオ主演で映画化された『ザ・ビーチ』(00)の原作者としても知られ、まず小説家として名を成した。面白いのは、言葉を使って物語を紡いでいたガーランドが、脚本家を経て映画監督に転身し、映像表現に新たな可能性を見出し、『ウォーフェア』にいたっては物語性すらも排除しようとしていることだ。
ガーランドはメンドーサに「戦場での君自身の実体験で、90分ほどの映画にできるものはないか?」と持ちかけたという。観客を、実際にあった戦場の最前線にほぼリアルタイムで放り込む。そのためには、物語をことさらに盛り上げたり、テーマやメッセージを語るセリフを言わせたり、現実離れした活躍を見せるようなことは一切しない。そしてこの映画のモチーフとして選ばれたのが、メンドーサが2006年にイラク戦争の激戦地ラマディで参加したある作戦だった。
当時のメンドーサはネイビーシールズの通信兵で、彼が所属していた小隊はラマディ市街の民家を占拠し、敵対勢力アルカイダの幹部を監視し、必要に応じて狙撃する任務に就いていた。しかし早々に先制攻撃を受けて2名の兵士が重症を負う。さらには敵に包囲されて集中砲火を浴び、決死の脱出劇を繰り広げることになる。