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『ビースト』シャールト・コプリー 7分もの長回しで撮ったライオンとのシーン、その秘話は?【Actor’s Interview Vol.23】
本番はマジックアワーの限られた時間で
Q:撮影スタイルという点で『ビースト』と『第9地区』の大きな違いは?
コプリー:『ビースト』ではステディカムによる長いショットがあった。僕がライオンと関わるシーンでは、7分くらいの長回しが行われたんだ。そこが『第9地区』との違いだ。そうした長いショットに対し、僕らは一日中リハーサルを繰り返し、本番は光が最も美しい、数分間のマジックアワー(太陽が沈む直前の時間)を狙った。おそらく3テイクが限界。セリフの変更などはすべて撮影前に完了し、僕はそこで全力を尽くさなくてはいけなかった。つまり『ビースト』では、撮影時に自分たちが何をすべきか完璧にわかっていた。だからスタッフやボルトを驚かせることはなかったはず。一方で『第9地区』は、すべてのテイクに驚きがあった。そこが大きな違いだね。
Q:ライオンとの共演シーンについて、もう少し詳しく撮影方法を教えてください。
コプリー:撮影現場には、スポーツチームのマスコットを、ちょっと醜くしたようなライオンがいた(笑)。頭と前足を着けてるけど、ヒゲはない。その姿で彼らは飛び回る。ときどき暑さのためにスーツ姿で辛そうな彼らに、僕は刺激を与えるようとからかったりしたよ。「さぁ、吠えてみて。僕を怖がらせないと。ウオオーって!」なんてね(笑)。僕らはふざけて楽しんでいたな。
『ビースト』© 2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
Q:ビジュアル・エフェクトによる合成を想定して演じる必要があったのでは?
コプリー:ビジュアル・エフェクトのスタッフが現場にいて、カメラの前で起こることを確認していた。7分もの長回しの時は、カメラはあらゆる場所に動き、僕はライオンたち(を演じるスーツアクター)と取っ組み合いをしたりする。その際に、僕の手が想定外の方向に動いて、後からの合成が難しくなると判断されることもある。そうなったら、他のアングルで撮ったカットで補う必要がある。「この方向からライオンを掴む動きを撮れば、うまく合成できる」という具合にね。カメラの動きとアングル、僕ら俳優の動きを調整する作業は、ありえないくらい大変なチャレンジだった。7分のシークエンスの間、ライオンをつねにフォトリアルに見せなければならないわけで、過去の同様の撮影とは明らかに違ったよ。
Q:あなたが演じるマーティンは野生生物学者で、ライオンと触れ合います。何か特別な準備はありましたか?
コプリー:典型的なゲーム・レンジャー(野生動物保護地区の管理者)をイメージした。僕は南アフリカ育ちなので、服装など彼らの外見をよく知っていた。役作りで重要だったのはライオンとの関わり方だ。ライオンの訓練士で、YouTubeにものすごい数のフォロワーを持つのがケヴィン・リチャードソン。僕は彼を数年前から知っていたので、一緒に過ごし、ライオンたちとどう触れ合うかを教えてもらった。まず攻撃的になってはいけない。戦意が伝わったら、たちまち反撃されて命を落とすことになる。支配的で自信に満ちた雰囲気を出しながら、無表情でいることが重要なんだ。なかなか奇妙な状態だけれど、こちらがそうすることでライオンは野生の本能を出さなくなるという。だからマーティン役のインスピレーションは、ケヴィン・リチャードソンだと言えるね。
Q:南アフリカで育ったあなたにとって、『ビースト』が描く密猟は身近な問題ですね。
コプリー:密猟は長い間、とても深刻な問題だし、野生動物の保護には多くの人が関心を寄せている。手付かずの自然が失われていくことを、世界中が注視するようにもなった。アフリカでは開発が進んでいるが、この大陸をハイウェイやビーチ・リゾート、カジノやホテルだらけに変えていいのだろうか? 貧困のイメージからは脱却するかもしれないが、地球にとって良いことなのか。複雑な問題だよ。