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『夜、鳥たちが啼く』城定秀夫監督 自分のやれることをやるしかない【Director’s Interview Vol.268】

『夜、鳥たちが啼く』城定秀夫監督 自分のやれることをやるしかない【Director’s Interview Vol.268】

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熊切和嘉、呉美保、山下敦弘、三宅唱、斎藤久志、これまで佐藤泰志原作の映画化を手がけてきた個性豊かな監督たち。このラインアップに新たに加わるのが、同じく佐藤泰志原作の『夜、鳥たちが啼く』を映画化した城定秀夫監督だ。本作含め今年だけでも5本の映画が公開され、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの城定監督が手がける佐藤作品。映画ファンとしては興味深い組み合わせだが、監督自身はどう対峙したのか?話を伺った。



『夜、鳥たちが啼く』あらすじ

若くして小説家デビューするも、その後は鳴かず飛ばず、同棲中だった恋人にも去られ、鬱屈とした日々を送る慎一(山田裕貴)。そんな彼のもとに、友人の元妻、裕子(松本まりか)が、幼い息子アキラ(森優理⽃)を連れて引っ越してくる。慎一が恋人と暮らしていた一軒家を、離婚して行き場を失った2人に提供し、自身は離れのプレハブで寝起きするという、いびつな「半同居」生活。自分自身への苛立ちから身勝手に他者を傷つけてきた慎一は、そんな自らの無様な姿を、夜ごと終わりのない物語へと綴ってゆく。書いては止まり、原稿を破り捨て、また書き始める。それはまるで自傷行為のようでもあった。一方の裕子はアキラが眠りにつくと、行きずりの出会いを求めて夜の街へと出かけてゆく。親として人として強くあらねばと言う思いと、埋めがたい孤独との間でバランスを保とうと彼女もまた苦しんでいた。そして、父親に去られ深く傷ついたアキラは、唯一母親以外の身近な存在となった慎一を慕い始める。慎一と裕子はお互い深入りしないよう距離を保ちながら、3人で過ごす表面的には穏やかな日々を重ねてゆく。だが2人とも、未だ前に進む一歩を踏み出せずにいた。そしてある夜……。


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佐藤泰志作品を映画化する



Q:佐藤泰志さん原作の映画化作品はそれぞれ違う監督が手がけているにも関わらず、共通した空気を感じます。本作にも同じものを感じましたが、何か意識されましたか。

 

城定:佐藤さんの持つ雰囲気があるんでしょうね。みんな原作通りに映画化しているわけではないけれど、通底するものがある。僕も合わせるつもりはなかったですが、佐藤さんの持つ力に導かれたのかもしれません。


これまで映画化してきた監督たちは作家性の強い方ばかりですが、僕はどちらかといえば、エンタメ寄りの「何でもやります」監督。だからこの中に入るのには、ちょっと気合入れましたね。自分の作家性とは何かを考えたりもしましたが、結局色々考えても自分のやれることをやるしかないなと。


Q:脚本は高田亮さんです。監督に依頼が来た時点で脚本は出来ていたのでしょうか。


城定:僕が依頼を受けた時点では、佐藤泰志原作で脚本を作ろうとしている段階でした。それで脚本家を誰にするかの相談を受け、これはもう高田君しかいませんよと。僕がその場で、高田君に電話をかけてお願いしました。高田君とはピンク映画の助監督をずっと一緒にやってきた仲で、しかも彼は、佐藤さん原作の脚本を色々と手掛けた経験もあるので。



『夜、鳥たちが啼く』© 2022 クロックワークス


Q:脚本化にあたり高田さんにリクエストしたことはありますか。


城定:何も起こらない日常だけではなく映画的な見せ場が欲しいと。おとなしくなり過ぎないようにお願いしました。ドキッとするようなシーンもないと、僕としてはしんどい。原作が入っている短編集の中から、他の短編を引っ張ってもらった箇所もありますし、野球選手のエピソードなど全然関係ない話を足した箇所もあります。


Q:確かに、野球選手のエピソードは佐藤作品とは少し違う雰囲気がありました。


城定:佐藤さんの映画化作品には“唐突な暴力”みたいなものがあるんです。『きみの鳥はうたえる』(18)で突然暴漢が襲って来たり、『海炭市叙景』(10)ではバーで大喧嘩したりとか、そういうところは欲しいなと。主人公がものを書いてるだけの話では、僕は時間を持たせられない。濡れ場や暴力はちゃんとやりたいと伝えました。





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