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『いつかの君にもわかること』ウベルト・パゾリーニ監督 愛とは耳を傾けること【Director’s Interview Vol.282】

© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.

『いつかの君にもわかること』ウベルト・パゾリーニ監督 愛とは耳を傾けること【Director’s Interview Vol.282】

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マイケル役、ダニエル・ラモントが起こした奇跡



Q:息子のマイケルが“そこにいること”と、彼の何気ないひとことが醸す存在感がすごいです。撮影当時、マイケル役のダニエル・ラモントは4歳だったとのことですが、具体的にどのように演出されたのでしょうか。


パゾリーニ:下手に演技経験がある子役だと「演技とはこういうものだ」と自分の中で勝手に出来あがっている恐れもある。今回はマイケルを演じるのではなく、マイケルとして存在して欲しかったので、演技経験のない子供を100人くらい集めてもらいました。そこで幸運にもダニエルに出会えたんです。彼は幸せな家族に囲まれて育ってきた元気な男の子でした。一方で、一人で物静かに過ごすことも出来て、知らない大人と一緒にいることも平気。役が決まった後は、父親役のジェームズと一緒に2週間ほど過ごしもらい、撮影前に仲良くなってもらいました。


とはいえ、子供の撮影に不安を抱えていたのも事実です。ジャック・ドワイヨン監督が撮った『ポネット』(96)という映画のメイキングを見ると、監督や親がカット毎に子役の女の子に指示を出し続け、女の子は言われるがままに動き、セリフを発している。それを後でうまく編集していました。自分も同じようにする必要があるかと思っていたのですが、何と今回は奇跡が起きた。ダニエルは撮影現場で完全なプロの役者になってくれたのです! 現場で「さあ撮影だ。仕事を始めるよ」と声をかけると、ジェームズは当然気持ちを切り替えるわけですが、ダニエルはその様子を見て、自分も気持ちの切り替えが必要だと感じたようでした。「アクション!」と声をかけると、元気なダニエルは、物静なマイケルになってくれた。



『いつかの君にもわかること』© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.


もともとダニエルは感受性が強い子なのですが、ジェームズをはじめ周りの大人が真剣に撮影に臨んでいるのを見て、自分もそうしなければという自覚が生まれたようでした。とにかく周りのことをよく見ていて、ボスぶって威張っているからと私を「ボッシー」と呼んでいました(笑)。


ダニエルのおかげで、『ポネット』のように撮影や編集で苦労することはありませんでした。もっとも嬉しかったのは、二人の2ショットが撮れたこと。一つのフレームに二人が映っていて、彼らが自然に話している姿はとてもリアル。それは決して編集で細工出来るショットではありません。観客も無意識に二人の関係を感じてくれたのではないでしょうか。




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