1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『BLUE GIANT』立川譲監督 ジャズの熱さと激しさをアニメでいかに表現するか【Director’s Interview Vol.288】
『BLUE GIANT』立川譲監督 ジャズの熱さと激しさをアニメでいかに表現するか【Director’s Interview Vol.288】

『BLUE GIANT』立川譲監督 ジャズの熱さと激しさをアニメでいかに表現するか【Director’s Interview Vol.288】

PAGES


演奏シーンの定番を打ち破りたい



Q:原作の演奏シーンは様々な表現の工夫がされており「音が聞こえてくる漫画」と評価されています。それをアニメに置き換える時に苦労されたポイントや、こだわった点は何でしょうか?


立川:ジャズのドキュメンタリー映画などの演奏シーンを見ると、複数の定点カメラで撮影しカットを切り替えるスタイルのものが多いんです。それは音楽を聴かせるのに映像がノイズにならないよう配慮した結果だと思います。でも私は初めて見たライブで熱くて激しいものを肌で感じたので、ジャズの演奏シーンの定番を打ち破りたかったんです。アクションのように荒々しいエフェクトが飛び出したり、イメージの世界に飛んでいくようなものを演奏シーンに入れたいと、企画の段階から思い描いていました。


Q:演奏シーンにはアニメならではの表現が満載です。


立川:そうですね。ピアノやサックスがグニャグニャにゆがんだり、音の勢いを波のように表現することは、作画的には相当難しいのですが、アニメーションならではだと思います。ただ原作者との打ち合わせで「PVにならないように気をつけてほしい」というリクエストがありました。例えば、演奏中にピアノから花が咲いて熱帯雨林になってしまったりするのはちょっとやり過ぎ。あくまでも演奏者たちが音で感情を表現しようとする様を映像にしようと。マジックみたいにならないよう気をつけました。



『BLUE GIANT』©2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 ©2013 石塚真一/小学館


Q:演奏者の動きをモーションキャプチャしCGで表現されていますが、指などの動きが繊細かつダイナミックで飽きさせません。


立川:実はモーションキャプチャは楽器の演奏者とは別の役者さんで収録しました。アクションや芝居の要素が絡むので、演奏をしつつ演じてもらう必要があったからです。その時に想定外だったのはジャズの重要な要素である「ソロ」パートでした。ソロはその時の感情やテンションに任せて自由に演奏するので、同じものは2度と再現できない、それでソロの部分を譜面に起こして役者さんに練習してきてもらいました。でもソロパートを譜面に起こすと膨大な量になるし、奏者の独特のフレーズや癖みたいなものもすごく出てくる。それを他の人が自分に取り込んで再現するのは大変そうでした。ソロパートのモーションキャプチャ収録はすごく時間がかかりましたね。


Q:カット割りもジャズの場合は難しそうです。歌詞がある曲なら文章の切れ目でカットを割ることができますが。


立川:悩みましたね。曲を何度も聴いてカットを割れるポイントを探しました。あとはレコーディングした時の様子を映像で撮っていたので、それを見て演奏者の動きで切り替えたりしています。ただ、1曲全部演奏すると7分くらいになることもあり、同じテンポでカット割りをすると300カット近くになってしまう。今回は映画全体で2,000カット近くあるのですが、演奏シーンでさらにカット数が増えてしまうので、強弱をつける意味でもカットを割るところと割らないところのメリハリを意識しました。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『BLUE GIANT』立川譲監督 ジャズの熱さと激しさをアニメでいかに表現するか【Director’s Interview Vol.288】