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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ダニエルズ監督 アクションとギャグの究極融合を目指して【Director’s Interview Vol.289】
企画に興奮し、製作費を捻出してくれたA24に感謝
Q:『エブエブ』は製作からA24が関わっています。前作の『スイス・アーミー・マン』はA24が北米配給を手がけており、その縁もあったのでしょうか。
クワン:2016年の終わり頃に『エブエブ』の企画をいくつかの会社に売り込み、そのひとつがA24でした。彼らはアイデアにものすごく興奮したものの、僕らが望む製作費を出すことまでは難しそうでした。しかしそこから脚本を練り上げていく期間で、A24は予算を何とか集めてくれていたんです。僕らも心から感謝し、完璧なパートナーになれると確信しました。
シャイナート:A24が正式に関わったのが、2018年ですね。そこからキャスティングやプロダクションが一気に動き始めたのです。
Q:結果的に『エブエブ』は、A24史上最高のヒット作になりました。
クワン:通常、この手のインディペンデント映画は、劇場でヒットしてもわれわれ監督がボーナスを受け取る契約ではありません。しかし今回、A24は契約にヒットによるボーナスを付けていてくれました。とてもラッキーでしたね。
シャイナート:『エブエブ』は最初に公開されてから、長い時間をかけて世界中でヒットしてくれました。おかげで僕らは月に一度くらいのペースでA24からいろいろな形で“お祝い”してもらってます(笑)。
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Q:『エブエブ』における多元宇宙(マルチバース)は大規模に感じられますが、バースの数としてはどれくらいを前提としているのですか?
シャイナート:メインとなるバースが4〜5で、その次のサブ的なものが10くらい存在します。
クワン:そして一瞬しか映らないバースも入れると100を超えてしまうかも(笑)。でも、どのバースも重要です。僕らが挑戦したのは無限の世界ですから。
シャイナート:あえて数で示すなら10億というところでしょう(笑)。
Q:では、それらのバースの中で最も描いていて楽しかったもの、また、撮影に苦労したものを教えてください。
シャイナート:アライグマのバースですね。アライグマはリモコンで動かすアニマトロニクスだったので、撮影であることを忘れるほど楽しんじゃいました(笑)。そのアライグマをミシェル(・ヨー)とハリー(・シャムJR)のアクションとどう融合させるか、スタッフ全員でテンションが上がったので、いつかこのバースだけでスピンオフを作りたいと本気で思ってます。一方で岩のバースの撮影は悲惨でしたね。
クワン:LAの中心から車で3〜4時間の砂漠で撮影したのですが、気温が45度の場所だったのです。
シャイナート:しかもコロナの感染対策でスタッフ全員がマスクを着けなければならず、二度と体験したくない思い出ですね。