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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ダニエルズ監督 アクションとギャグの究極融合を目指して【Director’s Interview Vol.289】

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『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ダニエルズ監督 アクションとギャグの究極融合を目指して【Director’s Interview Vol.289】

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映画を発明したリュミエール兄弟をはじめ、コーエンやダルデンヌ、ウォシャウスキー、ルッソなど、共同で一本の映画を撮る兄弟(姉妹)監督は何組もいるが、ここ数年、親友同士のコンビ監督の活躍も目立つ。その中でも一気に知名度をアップさせたのが、この2人、ダニエルズである。コンビとしては2作目の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(以下、エブエブ)がアカデミー賞で作品賞など10部門11という最多ノミネートを達成した。


ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートという、たまたまファーストネームが同じだったこの2人。前作『スイス・アーミー・マン』(16)でも、遭難した青年と“死体”の友情という奇想天外な設定に笑いもたっぷり加味して、異彩を放った彼らが、今やハリウッドを代表する監督コンビになろうとしている。『エブエブ』では主人公のエヴリンがマルチバースを行き来し、家族と世界を救うという、またもや斬新&大胆な世界を創り上げたダニエルズに、作品完成までのポイントや、監督としての2人の役割などを聞いた。


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マルチバースのアイデアが浸透したタイミングで完成



Q:マルチバースという概念は、ここ数年、マーベル映画などですっかり一般的になりました。お二人は以前からこの企画を温めていたそうですが……。


クワン:そうなんです。マルチバースはユニークな発想だと信じていましたから。でも2015年に「リック・アンド・モーティ」(異次元の冒険を描くアニメ)が第2シーズンに入り、その後、『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)も作られるという話を聞き、僕らの企画が“後出し”になってしまうと不安になり始めました。ただ僕らが考えていたのは、かなりの数の多元宇宙で、マーベルをはじめ他の製作者たちもさすがにそんなリスクは冒さないだろうと信じてました。



『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.


シャイナート:でも、そうやってマルチバースが人々に浸透していったのは僕らにはラッキーでしたよ。『エブエブ』が公開される頃には、僕の両親の世代でさえマルチバースを知ってましたから。(劇中で)エヴリンが最初こそマルチバースに圧倒されますが、だんだん慣れてきて、うんざりしたりもします。そんな感覚ですよ(笑)。


クワン:僕らの目標は、できるだけ多くのストーリーをひとつにまとめ、インターネットとともに生きる現代の混乱を表現することでした。映画化には難度の高いコンセプトですから、さすがに誰もマネしないという自信はありましたね。


Q:他のバースへのジャンプという点で、作品を観ると『マトリックス』(99)の影響も感じられますが、意識したのですか?


シャイナート:『マトリックス』の1作目は僕らのお気に入りの映画ですからね。


クワン:姉の友人からもらったVHSのコピーで『マトリックス』を初めて観たときは、美しさとスリルで涙が出るほど興奮しました。それから何度も観ていますが、だいぶ後に、タランティーノが所有するLAのニュー・ビバリー・シネマで、90年代映画特集があり、『マトリックス』と『ファイト・クラブ』(99)の2本立てをやっていたんです。あの2本を続けて観て劇場を出た瞬間、「こんな映画が作れたら、僕は監督を引退してもいい」とすら感じました。考えさせる哲学的テーマを持ちながら、アクション映画として観客を楽しませたい……。あの日に感じたことが『エブエブ』につながったのです。




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