『search/#サーチ2』ニック・ジョンソン&ウィル・メリック監督 TikTokやインターネットの革新を映画に反映する【Director’s Interview Vol.303】
現実のインターネットを再現する
Q:劇中には実在のアプリやサービスが多数登場します。残念ながら使えなかったサービスはありましたか?
ニック:はい。僕たちは脚本の時点で現実のインターネットをそのまま描こうと考えていたので、なるべく本物のアプリを登場させようと思っていました。プロットやストーリーを表現するためにテクノロジーが使われる映画は多いですが、この映画の場合、テクノロジーは舞台装置そのもの。だからフェイクは使いたくなかったんです。たとえば美術の木を作る時、段ボールを切り貼りしても本物には見えにくいのと同じで、偽物ではリアリティが出ません。ただし本物を使えないケースで特に多かったのは、実際のアプリで現実に悪いことが起きているか、劇中で本来意図されていない使い方をしていて、現実にもそういう使い方がされているもの。そういう場合はフェイクのアプリを作りました。劇中のとあるメッセージアプリはフェイクですが、それは実在のアプリに疑わしい話があったからです。
ウィル:もちろん、必ずしも法的な問題などのために使えなかったわけではないんです。世の中のためになる、人々のプライバシーを守るアプリであっても、悪役に使わせたい場合はフェイクのアプリで代用することがありました。素晴らしいアプリの悪い面を、わざわざ強調して描くことはしたくなかったので。
Q:現実のインターネットを再現したかったということですが、映画に取り入れる上で調整を加えた部分、調整が必要になった部分はどのような点でしたか?
ウィル:たとえば撮影が終わってからFaceTimeがアップデートされ、ウインドウの縦横比が変わるという事件がありました(笑)。現実のアプリがアップデートされた結果、編集の終盤になってから全部を変更する必要が出てきたんです。
ニック:架空のUI(ユーザーインターフェース)は最後の最後まで調整していましたね。「このポイントまでに手間がかかりすぎじゃない? ここにボタンを設置できないの?」ということがよくあったんです。脚本上では2ページ後に出てくるボタンでも、画面上の配置を変えられれば上映時間を30秒縮められる。実在のアプリにせよ架空のものにせよ、そういう場合はUIをよく変更していました。なぜなら、現実をことごとくリアルに再現することは求められていないだろうし、その部分は調整を加えてもリアルに感じられるから。大切なのは、まずは自問自答して、観客がリアルに感じられるかどうかを考えること。そこでリアルさが失われるなら、「じゃあスピードを上げよう」というふうに考えていきました。創作の大部分が編集にかかっているのは良いところでしたが、最後まで変化を加えられるのは恵みでもあり呪いでもあります(笑)。