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『ソフト/クワイエット』ベス・デ・アラウージョ監督 教育の衰退が生み出す問題とは【Director’s Interview Vol.314】

© 2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.

『ソフト/クワイエット』ベス・デ・アラウージョ監督 教育の衰退が生み出す問題とは【Director’s Interview Vol.314】

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ブラムハウス作品ということもあり、本作をある種ホラー/エンターテインメントとして観ることが出来たのは、主人公の女性たちを“怪物”として捉えたからだろう。しかし彼女たちは“怪物”ではなく普通の人間。そして、彼女たちと同じ思考の人間が多数存在するという紛うことなき現実。むしろこの事実にこそ恐怖を感じてしまう。強烈なメッセージを全編ワンカットというパワフルな手法で突き付けたのはベス・デ・アラウージョ監督。彼女はいかなる思いで本作を手掛けたのか。話を伺った。



『ソフト/クワイエット』あらすじ

とある郊外の幼稚園に勤める教師エミリーが、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義のグループを結成する。教会の談話室で行われた第1回の会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。やがて彼女たちはエミリーの自宅で二次会を行うことにするが、途中立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹との激しい口論が勃発。腹の虫が治まらないエミリーらは、悪戯半分で姉妹の家を荒らすことを計画する。しかし、それは取り返しのつかない理不尽でおぞましい犯罪の始まりだった……。


Index


オーディションが生む不健全な力関係



Q:製作にあたりジェイソン・ブラムとはどんな話をされましたか。


アラウージョ:ブラムハウスは完成した作品を買ってくれたので、ジェイソンは実製作には携わっていません。ただジェイソンに言われて面白かったのは、「もしあのラストが無かったら、この作品は買わなかったよ」というコメントですね。


Q:会合に集まった女性たちは、その会話の内容も相まって常軌を逸した雰囲気があります。キャスティングはどのように進められたのでしょうか。 


アラウージョ:オーディションは行わず、メインキャラクターは全員こちらからオファーしました。オーディションは不健全な力関係を生んでしまうこともあり、もともと好きではないんです。特にこの作品の題材的にも、そういうキャスティングの方法は違うだろうと。それで色んな作品を見て、気になった俳優に長いメールを書き脚本を送りました。出演を決めてくれた俳優とミーティングしたときは、いろんな質問を受けましたね。彼女たちに演技のスキルがあるのはわかっていたので、あとは私を信頼してついてきてもらうこと、登場するキャラクターにコミットしてもらうこと、それを私は出来るだけサポートすることを伝えました。



『ソフト/クワイエット』© 2022 BLUMHOUSE PRODUCTIONS, LLC. All Rights Reserved.


Q:俳優からはどんな質問があったのでしょうか。


アラウージョ:「なぜこの映画を作りたいのか?」「この狂気じみた役をなぜ私ができると思ったのか?」「登場人物たちはなぜこんな酷い行為をするのか?」といった質問が多かったです。中には話しているうちに泣いてしまった人もいました。それくらいメンタル的に響いていたんですね。


Q:エミリーのキャラクター設定に「不妊に悩む女性」という要素を入れた理由を教えてください。 


アラウージョ:彼女を定義づけているのは伝統的な妻の形(トラッド・ワイフ)なんです。外で働くのは夫、家で子供を育てるのは妻と決めつけ、それしかないという考えの持ち主。そんな彼女にとっての最悪なシナリオは、子供が待てないこと。それはつまり自分のジェンダーの役割を果たせないということなんです。だからこそ自分自身に対して怒りとフラストレーションが溜まり、この暴力的な行為につながっていくのです。


Q:なぜ全編ワンカットで撮り上げたのですか。 


アラウージョ:テンションが上がり続ける息もつかせぬ作品にしたかったからです。一瞬でもリラックスしてしまうと、緊張が解けてしまうんです。例えば画面の中で新しいものを見せてしまうと、人間の脳はそれを理解しようとして、それまでの感情がリセットされてしまう。今回はそういう瞬間を作りたくなかった。いろんな感情が溢れて膨らみ、それによってテンションがどんどん張り詰めていく作品にしたかったのです。





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