© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
『aftersun/アフターサン』シャーロット・ウェルズ監督 監督する人にとって、すべての作品はパーソナルなもの【Director’s Interview Vol.315】
俳優とのコラボレーションの楽しさ
Q:この映画はキャスティングが素晴らしいですが、ソフィ役の新人フランキー・コリオとは、どう出会いましたか? 800人の候補者がいたと聞いていますが……。
ウェルズ:パンデミックの時にキャスティングを始めたので、まずは写真やビデオによる審査となりました。そこから候補を絞っていき、実際に動き、演技をする映像を送ってもらいました。その人物の世界とのつながり方を見たいと思ったからです。そうした過程を経て、フランキーを知りました。実際に私自身が会った候補者は16人だけでしたが、そんな中でもフランキーの存在は際立っていました。彼女はじっとしていられない性格で、活動的で愉快な子です。おとなしくしていることが苦手だったようです。ただ、演技にはそういう部分も必要でした。彼女は自分自身と役との違い、さらに共通点の両方を理解していました。彼女は母親が応募してきた候補者でしたが、自分では気づかない才能を持っていました。
『aftersun/アフターサン』© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
Q:父親であるカラム役のポール・メスカルとは、監督とのコラボレーションと呼べる作業になっていますね。
ウェルズ:俳優とのコラボレーション無しでは映画は成立しないと思います。監督と俳優のどちらかが、一方的にキャラクターを作るなんてありえない。コラボレーションを通じて役が生まれるわけで、そこに楽しさもあります。ポールには私自身が考える人物像は伝えましたが、それを土台として彼は役を作り上げ、さらに深めていったわけです。役者を見ていると、こういうプロセスが非常におもしろいと思います。ある人物像を作り、そこに何かを加え、そうすることで、こちらの想像を超えていく。それが映画作りの究極のプロセスではないかと思います。
最初、脚本は自分の分身のようなものですが、それを書き終えて製作者に送った時から、もうそれは自分の手元から離れていくのです。それが喜びでもあります。そして、キャスティングはすごく大事なプロセスになりますが、私とポールはそのプロセスをすごく楽しめました。彼は思いやりを込めて、この脚本を読んでくれましたし、質問もぶつけてきました。カラムに共感し、彼を理解していて、それがこちらにも伝わってきました。