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『aftersun/アフターサン』シャーロット・ウェルズ監督 監督する人にとって、すべての作品はパーソナルなもの【Director’s Interview Vol.315】

© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

『aftersun/アフターサン』シャーロット・ウェルズ監督 監督する人にとって、すべての作品はパーソナルなもの【Director’s Interview Vol.315】

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ボウイやクイーンの音楽の力



Q:音楽も本当に印象的ですね。ブラーの「テンダー」、R.E.M.の「ルージング・マイ・リリジョン」、それにプールで流れるブラン・ヴァン3000の「ドリンキング・イン・LA」。これは楽しい使い方ですね。


ウェルズ:『ドリンキング・イン・LA』は特に気にいっている曲です。何かすごくひかれるものを感じました。好きで何となく選んだ曲で、場面の背景として使われます。ある夜、サウンド・デザイナーのヨヴァン・アイデルが仕事中にこう言い出したんです。“君が帰る前に見せたいものがある”って。もう夜中を過ぎていて早く家に帰りたい、と思っていた時間帯でした。彼は人物たちがプールに潜る場面にこの曲を使っていたのですが、それが人物たちの出会いや願望の気持ちを見事に表現していたんです。子供のソフィは早く世界の一部になりたいと考えていますが、まだ時は来ていない。でもその場面には発見の感覚があります。全体の手がかりとなる音の使い方になっていて、すごく気にいりました。


『Bran Van 3000 - Drinking in L.A.』MV


Q:もちろん、この映画で1番重要な曲は、クイーンとデヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」ですね。


ウェルズ:想定外の効果がこの曲のおかげで生まれました。映画のテーマが集約されている場面になっています。フレディ・マーキュリーの歌声を通じて必死な感情が伝わり、ボウイのロマンティックな感覚と見事に溶け合っていて、ボーカルに強烈な力があります。ダンスの場面に合うと考えクライマックスで使いました。この曲にオリヴァー・コーツが作ったスコア曲がうまく重なっていき、すごくいい場面になったと思います。


Q:この映画では鏡の中の顔や窓越しのシルエットなど、<反映>のイメージが効果的に使われていますが、最初からシナリオに書かれていましたか?


ウェルズ:一部は書き込んでいました。複数のイメージを重ねていく手法が気にいっています。撮影のグレッグ(グレゴリー・オーク)は反映するイメージを撮るのが好きなので、それらも考慮して全体の構成を考えました。また、物語としての効果を考えると、こうした反映や影などを通じて父親を映し出すことで、ソフィにとっての父親像がより不可解なものになっていき、おもしろいと思いました。



『aftersun/アフターサン』© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022


Q:特定のイメージから映画作りを始めると聞いていますが、この映画の場合、元になったイメージがありましたか?


ウェルズ:いくつかありました。父親のカラムがバルコニーにタバコを吸ったりする場面です。彼のこうしたイメージは、実際に映画で使うかどうかギリギリまで考えました。彼がソフィにダンスをさせる場面も切り替えなしに長いカットとして考えました。観客を映画の中に引き込むために大事な場面だと思いました。こうした場面があることで、映画で次に何が起きているのか、じっと見守っている人にとって、本当に見る価値のある作品へと変わっていくのではないでしょうか。


ソフィが父親の肩によりかかって寝ている場面も考え、それを通じてふたりの親密さや温かさも伝わる気もしました。海外の土地に夜遅く到着して、丘の上の光以外は何も見えない。私自身が子供の頃のパックツアーで体験したことです。最終的に映画で使ったイメージと使わなかったイメージがありますね。





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