© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
『aftersun/アフターサン』シャーロット・ウェルズ監督 監督する人にとって、すべての作品はパーソナルなもの【Director’s Interview Vol.315】
パーソナルな物語を作ること
Q:この映画はあなたのパーソナルな物語でもあるわけですが、最近、パーソナルな題材の映画が注目を集めています。スティーヴン・スピルバーグが『フェイブルマンズ』(22)、ケネス・ブラナーが『ベルファスト』(21)を作りました。どちらも自伝的な要素が入っていましたね。
ウェルズ:最近、スピルバーグと同じような立ち位置で物語を語る立場になっていることに気がつきました。でも、そんな比較は意味がないことに思えます。パンデミックによって、人はかつてなかったほど孤立し、内省的になったと思います。その結果、その人の人生にかかわる数多くのパーソナルな作品が生まれ、自伝的な映画も出てきました。私の作品はこうした流れとは関係なく、たまたま出てきた物語だと思っています。
映画の脚本を書き、監督する人にとって、実はすべての作品はすごくパーソナルなものだと思います。どこまでパーソナルなのか、それは作品によって違います。クリエイターにとって、そういう映画作りは楽な方法なんでしょうか? 少なくとも私の場合、人物を作る上でより明確な方法であることは間違いないです。映画は自己表現だと思います。何を優先するのか? そこからすべてが始まります。
『aftersun/アフターサン』© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
Q:パーソナルな監督としては、『遠い声、静かな暮し』(88)などで自身の家族生活を描いた英国のテレンス・デイヴィス監督がお気に入りだと聞きました。
ウェルズ:彼の映画の場合、モンタージュがありきたりではなく、時間の進め方も独特だと思いました。確かに好きな監督のひとりといえます。映像とサウンドの組み合わせ方がおもしろくて気にいっています。
Q:スコットランド出身の才能ある女性監督にはリン・ラムジー(『ビューティフル・デイ(17)』)もいますが、彼女の作品はいかがですか?
ウェルズ:いい監督だと思います。いつか彼女にも会ってみたいですね。
『aftersun/アフターサン』を今すぐ予約する↓
監督・脚本:シャーロット・ウェルズ
1987年、スコットランド出身、ニューヨークを拠点とするフィルムメーカー。ロンドン大学キングスカレッジの古典学部で学んだ後、オックスフォード大学でMA(文学修士号)を取得。その後、金融関係の仕事をしながら、ロンドンで映画スタッフのエージェンシーを友人と共に経営する。その後、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部でMFA(美術修士号) / MBA(経営学修士)を共に取得する大学院プログラムに入学。在学中は、BAFTAニューヨークおよびロサンゼルスのメディア研究奨学金プログラムの支援を受け、3本の短編映画の脚本・監督を手がける。短編初監督作『Tuesday』(16)は、2016年、エンカウンターズ短編映画祭でプレミア上映され、スコットランドBAFTAのニュータレント賞にノミネートを果たす。2作目『Laps』(17)は、2017年のサンダンス映画祭で編集部門のショートフィルム特別審査員賞を受賞し、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭の短編ナラティブ部門の審査員特別賞を受賞。修了制作『Blue Christmas』(17)は、同年9月にTIFFでプレミア上映される。2018年、「フィルムメーカー・マガジン」の“インディペンデント映画の新しい顔25人”に選ばれ、2020年のサンダンス・インスティテュートのスクリーンライター及びディレクター・ラボのフェローとなった。『aftersun/アフターサン』(22)は長編初監督作品である。
取材・文:大森さわこ
映画ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、訳書に「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウエブ連載をもとにした取材本、「ミニシアター再訪」も刊行予定。
『aftersun/アフターサン』
5月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022