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『渇水』髙橋正弥監督×白石和彌プロデューサー 業界内の噂だった脚本が日の目を見るまで【Director’s Interview Vol.320】

『渇水』髙橋正弥監督×白石和彌プロデューサー 業界内の噂だった脚本が日の目を見るまで【Director’s Interview Vol.320】

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業界内で噂になった脚本



(編集部):この脚本は「業界内で噂になっているすごい脚本」だったそうですね。


白石:そうですね。製作直前までいって色んな理由でダメになっちゃったとか、そういう話はみんな大好物だから、噂はすぐに聞こえてきますね(笑)。いい脚本だという話はいろんな人から聞いていたし、そんないい本なら読んでみたいなとずっと思っていたんです。とはいえ自分に来ている話ではないから、忙しさにかまけてそんなことは忘れていた。だから今回お声がけいただいて「これがあの本なんだ!」と読んでみたら、実際すごかった。僕にはない世界だし、何回頓挫したか詳しくは知りませんでしたが、おそらく定期的に書き直しているんだろうなという感じがすごくあった。諦めずに粘り腰でコツコツと直したんだろうなと。実際の最終稿は、第何稿ぐらいだったのですか?


髙橋:たぶん8か9だと思います。第7稿までは覚えているので(笑)。


白石:髙橋さんの映画との関わりも含めたその真摯さみたいなものが、すごくストレートに脚本に出ているなと感じました。だから読んですぐに、「髙橋監督に会いたいです。最終的にやれるかどうかはわからないですけど」とお伝えしたんです。でも脚本を読んだ感じで、会う前からどんな方かわかっていたような気もしていました。実際にお会いして、この人柄と寡黙な感じがすごく印象に残ってますね。髙橋さんは最初に何を話したか覚えていますか?


髙橋:いや、内容は覚えてないですね。白石さんが読んでくれたんだということしか記憶にない。具体的に何をどうっていうのは忘れちゃいました(笑)。



(左から)白石和彌プロデューサー、髙橋正弥監督


白石:読ませてもらった脚本はクオリティが高かったですが、「この脚本で自分の人生が変わるかも」というような高揚感などはありましたか?


髙橋:この脚本で映画を作れたら…という思いはありましたが、今後の映画人生が変わることまでは意識していませんでした(笑)。でもいい作品になりそうだとは感じていました。商業映画として、売れる、売れない、はあるかもしれないけれど、すごくいい脚本だから映画にすべきだという応援の声はいっぱい頂いていましたし、僕らの周りのスタッフやキャストの方たちには結構好評だったんです。ただやはりビジネスとして配給サイドに持っていくと「ちょっと地味だね」「こういう映画をいま誰が観るのかなぁ」という話になっちゃって(笑)。


映画の規模を小さくしてスモールバジェットで作りきるというやり方もあったとは思いますが、でもせっかくいい脚本だと言ってくれる人がいるのなら、多くの方に観てもらえる体制で作りたいなと。なるべくそこは譲らずに頑張った結果、今回担当してくれた長谷川晴彦プロデューサーに読んでもらうことができて、結果白石さんにも読んでもらうことになったんです。


白石:よく腐らずに続けられましたね(笑)。


髙橋:結構、腐りかけてましたよ(笑)。1年に2回ぐらいは配給会社などに持っていったのですが、「ウチだと、これは出来ないなぁ」という、乗るに乗れない現実があった。渡した脚本が送り返されてくると「やっぱりダメなのかなぁ」と…。自分に名前も実力もなかったので、それを改めて感じてしまい「俺が監督だとダメなんだな」と思ったこともありました。別の方に監督してもらって、僕は企画やプロデュースに回った方が映画になる確率は高いのかなと考えたりもしましたね。でも誰に監督してもらったら良いか分からないこともあり、「これは髙橋が監督をやるべきだ」と言ってくれる方もいたので、腹を据えてもうちょっと粘ってみようと。


白石:でもこうして形になって、その一部に僕も入れて嬉しいです。


髙橋:白石さんに脚本を読んでもらい、応援していただけるとお話を聞いたときは、非常に嬉しかったですね。白石さんは社会問題も含めテーマ性のあるものをこれまで描いてきた方なので、そういう人が気に入ってくれたのであれば、うまく回っていくんじゃないかと。いろいろ断られてきましたが、こういう風に拾われて助けられたのは非常に有難かったです。





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