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『孤狼の血 LEVEL2』白石和彌監督が斬る!日本映画界の問題点と改革の狼煙【Director’s Interview Vol. 136】

『孤狼の血 LEVEL2』白石和彌監督が斬る!日本映画界の問題点と改革の狼煙【Director’s Interview Vol. 136】

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日本映画の可能性を大いに感じさせた力作『孤狼の血』(18)から3年。長編デビュー作『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(10)から、11年――。トップランナーとして活躍する白石和彌監督は、日本映画界に強い危機感を抱いていた。作品のクオリティも、制作環境も、まだまだ改善の余地は多い――。そうした気概の表れが、待望のシリーズ続編『孤狼の血 LEVEL2』(8月20日公開)には満ちている。


『孤狼の血 LEVEL2』は、先輩・大上(役所広司)の跡を継いだ日岡(松坂桃李)が、自らの力におぼれ、正義感と私欲がないまぜになっていくストーリーが展開。そこに、最凶の極道・上林(鈴木亮平)が現れることで、警察・ヤクザ・民間人を巻き込んだ両者の全面対決が勃発する。



『孤狼の血 LEVEL2』© 2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会


アグレッシブな本作の制作にあたって、白石監督が取り入れたのは「リスペクト・トレーニング」。Netflixの制作現場で行われている、ハラスメントを防止するための講習だ。これまでブラックボックスだった映画・ドラマの制作現場の、風通しを良くするためにも注目を浴びているものだが、白石監督は「映画業界でもやるべき」といち早く導入。


「新時代の東映やくざ映画」の看板を背負っていることからわかる通り、『孤狼の血』は、個性的なキャラクターたちが己の信念と生き様をぶつけ合うエネルギッシュなシリーズだ。そのぶん、怒号が飛び交うシーンも、過激な描写も、もみ合いもつれ合うアクションシーンもたっぷりと収められている。「だからこそ、リスペクト・トレーニングを行うことで業界全体へのメッセージになる」とは、白石監督の弁だ。


インタビューの前半では、主演の松坂桃李と共に駆け抜けた本作の舞台裏を、後半ではリスペクト・トレーニングを中心とした国内の制作環境の問題点と改善点、さらには師匠・若松孝二とのエピソードや、美術監督・今村力への敬愛を語っていただいた。白石監督がいま、何を断行しようとしているのか――。熱い言葉の数々を、ぜひ目に焼き付けていただきたい。


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『アジョシ』を意識し、松坂桃李が自ら髪型変更を提案



Q:前作『孤狼の血』から3年の月日を経て、「松坂桃李くんの進化を感じた」とおっしゃっていましたが、どういったところにそう感じたのでしょうか。


白石:やっぱり、自信が付いたんじゃないですかね。『孤狼の血』のあとに『新聞記者』(19)に出演して賞も受賞して……。もちろん賞がすべてではないですが、30代の前半でやり切った感があるというか、達成した人独特の“余裕”を感じました。


Q:NHKの「SWITCHインタビュー 達人達」を拝見したとき、松坂さんが現場で、非常に柔和な雰囲気を醸し出していたのが印象的でした。とはいえ、飛び降りアクションなど、覚悟のいるシーンもあったかと思います。松坂さんは現場でずっと変わらず、あの雰囲気だったのでしょうか。


白石:そうですね。「こんなことやりますよ」と伝えたら、「ええー」とか言いながらも(笑)、いざやるとなったらカッコよく見せようと全力で取り組んでくれました。とにかく桃李くんは、現場でスタッフが不安に感じないようにずっと気を配って、笑顔でいてくれましたね。


ただ、1回目の緊急事態宣言に入ったときはやっぱりちょっと不安だったみたいで、「オンライン飲みをしたい」と彼が言ってきたんです。そのときはひげを生やしていて「こんなタイミングじゃないと、自分がどれくらいひげが伸びるのかがわからない」と言っていたけど、多分それも見せたかったんじゃないかな。



『孤狼の血 LEVEL2』© 2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会


Q:松坂さんのひげスタイル、ワイルドでカッコよかったです。


白石:そうですよね。そのあと、衣装合わせで会ったときにはちょっとオラついた感じが出ていて、「おっ、雰囲気を作ってきたな」と感じましたね。どういうプロセスで作ったかは聞かなかったのですが、印象的でした。


話すといつもの桃李くんに戻るんですけどね。あの時期は、ひょっとしたらコンビニに行くときとかも、オラついていたかもしれない(笑)。


Q:(笑)。ひげもそうですが、今回、松坂桃李さんはウォンビンを意識したヘアスタイルにしたと伺いました。そうした日岡のルックは、かなり早い段階から「こうしよう」とおふたりで話していたのでしょうか。


白石:人気俳優は、髪形を変えるのも色々とあちこちに確認を取らないといけないことが多いんです。特に(松坂)桃李くんくらいの人気者になると、言い出せない雰囲気が業界全体にもでてきている。だけど、今回は桃李くんのほうから、「髪を短くしたいんです」と最初に提案してくれました。


「大丈夫なの?」と聞いたら、「僕が周りを説得しますから!」と言ってくれて。それだけ、日岡という存在が桃李くんにとって大事なものだったんでしょうね。『いのちの停車場』を直前まで撮影していたこともあって、気持ちを切り替えたかったんじゃないかな。実は鈴木亮平くんも髪形について提案をしてくれました。そうした彼らの想いが、役になっていったんだと感じますね。


ウォンビンというのは、言わずもがな『アジョシ』(10)です。アクションの雰囲気も、意識していました。





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