日本映画の制作環境は、今後二極化していく
Q:先ほど『アジョシ』の話がありましたが、『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)の中でも、韓国映画風の作品が登場しますよね。白石監督の中で、韓国映画はどのような存在なのでしょう?
白石:いま『孤狼の血』のような作品を日本で探すとなったら、国内にはないんですよね。それもあって、韓国映画は参考にしていますし、雰囲気も近い。あとは『仁義なき戦い』(73)しかり、70年代の東映やくざ映画ですね。韓国映画は、予算規模も日本とは全然違うんですよね。この辺りは変えていきたいなと思っていますが。
Q:それこそ、社会における映画の地位……バックアップ体制なども、韓国は日本と大きく違うと聞きます。
白石:韓国で『孤狼の血』を撮ったら、3カ月くらいかけると思います。でも日本では1カ月で撮りきらなければならない。ただ、同じ環境で撮らせてもらったら、クオリティは負けないという感触は見えてきましたし、Netflixなどの黒船が押し寄せてきたことで、日本の制作環境も少しずつ変わってきているように感じます。
『孤狼の血 LEVEL2』© 2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会
Q:ということは、日本の映画の制作環境の未来には、希望を感じているのでしょうか。
白石:そうですね……(考え込む)。二極化していくだろうなとは感じます。
Q:二極化、というのは、「良い」と「悪い」の差が開いていくということでしょうか。
白石:はい。例えばNetflixだと、週に1日は必ずオフを作るんです。休憩時間の確保や、1日の撮影時間の上限もそうですね。そんななか、各スタッフがNetflix作品を優先する流れになりつつあります。
僕が会社の経営者だったら、Netflix作品を優先するのは当然だと思いますね。ギャラは値切られないし、スタッフの休みを確保してくれたり率先して労働環境を整えてくれるし、リスペクト・トレーニングも実施してくれるし……。そうしたなかで、ようやく映画界も危機感を抱くようになってきたように感じています。
『孤狼の血』でリスペクト・トレーニングを行うというメッセージ