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『渇水』髙橋正弥監督×白石和彌プロデューサー 業界内の噂だった脚本が日の目を見るまで【Director’s Interview Vol.320】

『渇水』髙橋正弥監督×白石和彌プロデューサー 業界内の噂だった脚本が日の目を見るまで【Director’s Interview Vol.320】

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順撮りにこだわった子どもの撮影



白石:演出家として「これは外しちゃダメだな」と、この作品で一番こだわったことは何ですか?


髙橋:姉妹のキャスティングですね。姉妹の家の水を停めるという物語の核においては、やはり姉妹をうまく描けないと岩切も描ききれない。その姉妹役をお願いできるような子どもたちをかなり粘って探しました。


白石:子どもたちをいかに成立させるのかは、僕もずっと気になっていました。子どものシーンを順撮りにこだわられていたのは感心しました。


髙橋:子どもが出る映画やドラマにこれまで結構携わってきて、「子ども担当」だったことも多かったんです。撮影中は子どもたちの面倒も見なければいけないし、特に地方ロケだと寝食を共にすることも多い。そうやって子どもを間近で見ていると、撮影の序盤から中盤、そして終盤では顔つきが全然違ってくることがよくわかるんです。今回は短期間での撮影でしたが、出来るだけ順撮りにしてあげて、そのときどきの表情を捉えたかった。それは自分の腹に強くあったので、スタッフにお願いして順撮りでやらせてもらいました。



『渇水』©2022「渇水」製作委員会


白石:(髙橋さんが助監督としてついていた)相米慎二監督も子どもの撮影の際はそのようにしていたのでしょうか。


髙橋:確かに相米さんの子どもを扱った映画では、トップシーンと最後のシーンでは顔つきの違いを感じとれますよね。また、市川準さんの現場などでは、新人を使うときのコツのような感覚で、“順撮り”は一つの要素になっていましたね。


白石:現場を見ながら、髙橋さんが持っている引き出しはまだまだあるんだろうなと思っていましたが、他にも10年くらい温めている企画とかあるんですか?


髙橋:さすがに10年はないですが、4~5年温めてる企画が二つほどあります。でもそろそろやらないとまた10年経っちゃう(笑)。10年に1本撮っている監督もいますからね。


(編集部):本作はフィルムでの撮影ですが、フィルムで撮ろうと言ったのは白石さんだったそうですね。


髙橋:そこはすごく嬉しかったですね。我々はフィルム育ちなので、どういう画になるかというのは想像つきますし、この話でフィルムでやれるのは非常に嬉しいこと。すぐにその話に乗りました。


白石:僕も監督なので、フィルム撮影だと予算が余計にかかったり現場の段取りが増えることはよくわかるんです。今回はプロデューサーという立場ではありましたが、現場の予算を仕切る役割ではなかったから、どこかでバカなふりをしてそういうことを言うのも必要かなと。そういう役割のプロデューサーがいてもいいかと、フィルムでの撮影を提案させてもらいました。現場を仕切る人たちにはちょっと迷惑な話だったかもしれませんが、結果、フィルムで正解だったなと思いますね。



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監督:髙橋正弥

1967年、秋田出身。根岸吉太郎、高橋伴明、相米慎二、市川準、森田芳光、阪本順治、宮藤官九郎作品で助監督としてキャリアを重ねつつ、映画『RED HARP BLUES』(02)、『月と殺人』(10)、ドラマ「マグマイザー」(スカパー!、17)などで監督を務める。2023年初夏、監督最新作『愛のこむらがえり』が公開予定。


企画・プロデュース:白石和彌

1974年、北海道出身。若松孝二監督に師事し、フリーの演出部として行定勲、犬童一心監督などの作品に参加。『ロスト・パラダイス・イン・トーキョー』(10)で長編デビュー。『凶悪』(13)で第37回日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞するなど脚光を浴びる。『日本で一番悪い奴ら』(16)、『牝猫たち』、『彼女がその名を知らない鳥たち』(いずれも17)、『サニー/32』、『虎狼の血』、『止められるか、俺たちを』(いずれも18)、『麻雀放浪記2020』、『凪待ち』、『ひとよ』(いずれも19)、『死刑にいたる病』(22)など監督作で国内外の映画祭、映画賞を席巻。『虎狼の血 LEVEL2』(21)では第45回日本アカデミー賞で作品賞、監督賞をはじめ最多13部門受賞。現在、「仮面ライダー BLACK SUN」がAmazone Prime Videoにて全世界配信中。日本映画界を牽引する映画監督のひとり。



編集・構成: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『渇水』

6月2日(金)全国公開

配給:KADOKAWA

©2022「渇水」製作委員会

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